第6日
2005年5月20日(土) 2006.2.9 公開
ルームサーヴィスの朝食を部屋のテラスでとるゴージャスなひと時 |
5:45起床、6:15にデリヴァリーを頼んでいた豪華ブレックファストをとる。
今日はダイヴィングなので朝が早く7:00出発、
レストランでの朝食は7:00からなのでルームサーヴィスにしたのだ。
マンゴ&グァヴァジュースに、卵料理、フルーツヨーグルトにトースト。
部屋の外、プールサイドのテーブルで食べていたら、小鳥もチュンチュン寄ってきた。
朝から満腹、天気も快晴。
予定通りの7:00、ダイヴショップからお迎えのヴァンがやってくる。
ダイヴ・マスターはサナという名の若いビッグマン。
巨体といってもいわゆるデブではなく、いかにも体育会系の大男だ。
しかし物腰は丁寧、性質もおとなしめなカンジで、総合的にティム・ダンカン
(NBA サンアントニオ・スパーズ所属のスタープレイヤー)に似ている。
まああそこまでデカくはないが。
挨拶を済ませ、出発前にまずホテルのエントランスでレンタル器材のチェック。
サイズが合うかとか、使い方の簡単な説明とか。
しかも各装備品とも複数サイズ取り揃えているじゃないか。
しっかりしてるなあ! という印象。
17日のコモドでのダイヴィングが、
いかにも的なノリ一発みたいなカンジだったから余計…!
妻のウェットスーツと僕のブーツがジャストフットするものがなかったので、
行く途中にショップに寄ってピックアップすることになった。
移動の車中で、Cカードとログブックのチェックもなされる。
これもコモドの時はなかった行事なので、おお、というカンジだったが、
まあ本来は当たり前だな。
そして簡単なブリーフィングも行われた。
今回の目的地はトゥランベンというバリ島北東部のスポットで、
ここはビーチエントリーで沈船ダイヴィングができる場所として有名。
バリでも1、2を争う人気スポットである。
沈船ダイヴィング用のガイド地図も見せてもらいながらの説明に、
早くもかなりテンションが上がってきた!
U.S.A.T.LIBERTYという名の貨物船で、
第二次世界大戦中に日本軍に沈められたアメリカ籍の船であるとのこと。
全長は120m。
うーん、これは眠気も吹っ飛ぶじゃないか。
ちなみにマスターのサナは日本語もある程度話すことができる。
途中ショップを経由し、無事にピッタリ合うギアもゲット。
器材を取りに寄ったダイヴショップの前で |
今日の客は僕ら2人だけかと思っていたらそうではなくて、もう1人いるらしい。
その人物を迎えに「グランド・バリ・ビーチ」というホテルへ。
今日から23日まで、件の「PARTAI DEMOKRAT KONGRES」という国際会議が
開催されている当のホテルで、ゲートを通過する時にセキュリティ・チェックあり。
ホテルのロビーで第3のゲストである巨大な白人青年と合流するが、
何やらマスターのサナと話し込んでいる。
何と、資金が底を尽いてきたので今日のダイヴィング参加をキャンセルするんだって!
ビックリした。
余談ながらこの赤貧白人青年は、
185cmはありそうなサナよりもさらに大きなマシュマロマンであった。
いざトゥランベンに向けてひた走る。
ドライヴァー氏はニコニコ笑っていて愛想はいいものの無口だったが、
マスターのサナと道中ずっと会話をする。
ラブアンバジョーのガイドのメウスもそうだったけど、
サナもまた日本語習得にとても興味を持っており、
○○は日本語で何と言う? □□は? と学習に余念がない。
そしてその覚えがまた早く、賢い。
インドネシアでは昔の日本のドラマがテレビで放送されていて、
それが結構人気があるそうで、サナも非常によく知っていた。
主題歌なんかもとても正確に暗唱しており、
藤井フミヤの「TRUE LOVE」を日本語で皆で歌い上げたよ。
他にはスポーツの話などでも盛り上がる。
サッカーの中田英寿や中村俊輔、モータースポーツの佐藤琢磨や阿部典史など、
日本人選手についてもサナはよく知っていた。
あとサナから聞いた豆情報としては、インドネシアでも
バイクに乗る時はヘルメットをかぶることを法律で義務付けられているが、
民族衣装を着ている場合はかぶらなくてもいいそう。
街中の大通りの中央分離帯のところに新聞売りの子供たちがたくさんおり、
信号待ちの車に売っているのにも驚いた。
中には読売や朝日など日本の新聞もあった。
僕たちの顔を見たらちゃんと日本の新聞を出してくるところがたくましい。
買わなかったけど。
車は都市部から山間を抜けて3時間ほども走り、
10:00頃、ついにトゥランベンに到着する。
おお、これぞガイドブックで見た景色じゃないか。
さっそくゴロタ石でいっぱいのビーチに移動し、
着替えなど準備をしてダイヴィングに備える。
このビーチからエントリーする |
さすがの人気スポット、ダイヴショップのヴァンがすでに幾台も停まり、
お客もかなり多そうだ。
ゲストたちは白人がほとんどで、日本人は見る限り僕たちだけ。
安物のネックレスやブレスレットを売りつけにくる物売りたちがしつこい。
また、このダイヴスポットでは
地元のおばちゃんや子供たちと思しき面々がアシスタントとして相当数働いており、
みな黙々と器材のセッティングやタンクの運搬などに精を出していた。
ダイヴ・マスターのサナ
後ろに座っている笑顔の男がドライヴァー氏 |
準備段階で僕がデジカメをセットしていると、
マスターのサナがものすごく興味を持っていろいろと訊いてくる。
値段とか性能とか記録形式とかプリント方法とかPCとの接続だとかいろいろ。
ティム・ダンカン似の風貌に似つかわしく、
これまでは落ち着いた雰囲気で大人びていたサナだったが、
このカメラに関してだけは子供のように好奇心丸出しで、
おんなじことを何回も興奮した口調で尋ねてくる。
そして最後に一言、日本語で「ホシイナア…」だって。
その気持ちは充分に伝わったぞ。
僕たち日本人にはデジカメやパソコンを買って使うことは
すこぶる日常的な行為となっているけど、この国の人たちにとってはそうじゃなくて、
たとえスクーバ・ダイヴィング・ショップのダイヴマスターとて
水中デジカメを持っていないのが普通なのだ。
いつだってどこだってそうだけど、誰かが感じている“常識”や“普通”は、
地球上であまねく“常識”や“普通”なのではない。
ダイヴィング、スタート。
波打ち際から海に入り、
波の影響がある程度弱くなったあたりまで沖に歩いてからフィンを履くのだが、
僕はともかく身長154cmの妻はかなり辛そう。
でも気は優しくて力持ちの大男、サナのアシストで事なきを得ていた。
ちなみにサナはスノーケルを装着していなかった。
背の低い妻(右)は大男のサナ(左)に手伝ってもらって何とかフィンを装着 |
10数メートルも沖に出ればもう沈船が目の前に!
透明度も20mほどと、コモドに比べれば格段に視界が良くて、楽しいったらない。
潮流もかなり弱い。
これも3日前のコモドでのカレント・ダイヴとは大違いでとても潜りやすい。
後でサナに聞いたら、いつもはもう少し流れがきついそうで、
今日はとてもラッキーだったとのこと。
初めてのレック・ダイヴィング、初めて見る沈船に気分は高揚する |
初めてのレック・ダイヴィング(というかこれで通算わずか7本目なのだが)は、
何とも言いようがなく最高に楽しくて貴重な体験だった!
前述のように透明度は高かったし、沈船は漁礁になるので魚影も濃い。
残念ながら大物に出遭うことはできなかったが、
白いウミウシの仲間や海草に擬態しているリーフフィッシュなど、
なかなかに興味深く貴重な小さな生き物たちを幾種類か見ることができた。
帰国後調べたところ、キイロウミウシというやつのようだ
リーフフィッシュといえばアマゾン流域に棲む淡水魚の方がひょっとしたら有名かもしれない
和名は何と言うんだろう? |
さすがの人気スポット、海の中も混み合っていた。
ざっと見て10組ほどは潜っていたんじゃないだろうか。
先ほども書いたようにそのほとんどが白人ダイヴァーだったが、
白人は陸の上同様に水の中でも薄着で、
多くのダイヴァーが半そで半ズボン型のウェットスーツを着ていた。
さすがの人気スポット、海の中は結構な混雑 |
上がってからマスターのサナに聞いたら水温は27℃だったそうで、確かに暖かかった。
ちなみに一番水温が低くなるのは意外にも7〜9月頃だそうで、
22℃あたりまで下がるらしい。
水深は最深部で20mちょっと。
ある程度深さがある方がやっぱり中性浮力をとるのは簡単だった。
ビーチサイドのレストランでランチ |
1本目のダイヴを終え、ビーチサイドにあるレストランでランチ。
デカい海の家みたいな建物だ。
ナシゴレンを食べた。
昼食中も話題の多くはカメラの話。
よっぽど欲しいんだろうなあ、サナ…。
日本では5万円ほどで購入できるデジタルカメラも、
インドネシアでは10万円前後するらしく、
所得水準と合わせて鑑みると本当に我々の想像以上に入手は困難なのだろう。
あと話していて若干驚いたのが、
サナはインドネシアの首都であるジャカルタに行ったことがないということ。
昨晩行ったレストラン、「ブンブ・バリ」のウェイターくんも、
フローレス島の“ラブアンバジョー”という地名を知らなかった。
僕らからしたら、ええ、おんなじ国に住んでるのに、とついつい思いがちであるが、
彼の国の人たちの住む世界はそれほど広くない。
テレビや新聞、雑誌、インターネットなどのメディアの発達度合いは
日本のそれの比ではないし、また何より、
それらの日々流れゆく過多な情報に振り回され縛られて生活をしていく必要も、
僕たちのようにあるわけではないから。
3日前にコモドでダイヴィングした話もしていたんだが、
コモドの時のオヤジ・ダイヴマスターはサナの知り合いらしい。
僕たちが潜った時は透明度が低かった、と言ったら、
普段はあの海域の透明度は20mぐらいあるんだけどなあ、だって。
本当にアンラッキーだったみたいだ。
2本目のダイヴでも大物には遭遇しなかったけれど、
アネモネフィッシュやバラクーダの群れ、リーフフィッシュなどに遭うことができ、
高揚した気分のまま、順調にダイヴィングを終えた。
繰り返すが、最高のダイヴィングだった。
大小異なる種類のアネモネフィッシュが遊んでいた
さっきの赤いリーフフィッシュの白い版?
ガーデンイール、和名はチンアナゴ
体を砂に埋めて顔だけ覗かせている面白いやつ
ただ人が近付くとすぐに引っ込んでしまう |
再び4時間車に揺られてホテルのあるヌサドゥア地区に帰る。
さすがにダイヴマスターのサナも疲れたのか、とても静かな車中だった。
ただ、バリ中心部に差し掛かり、もうホテルも近いという地点で、
血を流して道路の路肩に横たわっている青年を目撃した。
バイクに乗っていて自動車と接触事故を起こしたようだ。
命は大丈夫そうだったが、うう、と呻きながら口から血を流していたよ…。
前にも書いたが、日本など比較にならぬ乱暴な運転が普通にまかり通っている公道上、
こんな事故はそれほど珍しいものじゃないのかもしれない。
ここで唐突だが、
インドネシア(バリ)の自動車事情について(そんなたいそうなもんじゃない)。
走っている自動車は、ご多分に漏れず8割方が日本車。
たまにメルセデス・ベンツやBMW、VWなどのドイツ車が混じる。
信号待ちをしていて、ピッカピカの黄色い、
この時点では日本でもまだほとんど見かけない新型SLKを見た時は驚いた。
インドネシア国産らしき車は見当たらなかったような気がする。
マレーシアでは結構国産車が走っていたんだが、
この国にはあまり有力な自動車メーカーはないのだろうか。
夕陽の盛りの頃、ザ・バレに戻りサナたちと別れる。
部屋に戻ってまずは風呂に入る。
そして今晩は妻がせっかくだから隣接するスパに行ってエステをしたいと言うので、
フロントに電話して申し込む。
当然受けるのは妻1人で、僕は待っている予定だったんだけど、
何か予約の電話でしゃべっているうちにふと自分もやってみたくなって、
「男もできるんですか?」と訊いたら「もちろんです」と言うので、
気付いたら「2人」と申し込んでしまっていた。
こんな機会でもないと一生やらないだろうしね。
“トラディショナル・フェイシャル”という60分のコースで、
美顔エステの他に手足のマッサージも付くとのこと。
先に食事を済ませることにして、20:30の予約にする。
というわけでまずはディナー。
今日はホテルのレストランに行く。
南国リゾートならではのオープン・エアーの開放感が心地良く、
メインプールサイドに位置するロケーションも抜群。
そしてウェイター、ウェイトレスたち従業員の対応もみな笑顔で気持ちがいい。
ぜひ日本人にも見習ってほしい。
そろそろ夜の帳も下りてきた。
ザ・バレのレストランで働く人たち |
料理はマグロのタルタル アヴォカドソース、スモークドサーモン・ロール、
レッド&イエローペッパースープ、ムール貝のスープ、
サラワとゴートチーズのグリル、イカのオックステール・シチュー詰め、
そしてデザートにフルーツ数種類のシャーベットと豆乳チーズケーキを食す。
ドリンクはフルーツ・パンチとバナナ・スムージー。
マグロのタルタル アヴォカドソース
レッド&イエローペッパースープ
ムール貝のスープ
サワラとゴートチーズのグリル
イカのオックステール・シチュー詰め
パッションフルーツが入っている豆乳チーズケーキ |
どれもこれも見た目、味ともに筆舌に尽くしがたい贅の限り。
とは言いつつも薀蓄を少しだけでも述べてみると、
まずソースの口当たりが最高に爽やかなマグロのタルタル。
そして身がガッチリ入っているんだろうという想像を良い方向に裏切り、
ムール貝の風味がヴェイパー状になって満ちているスープ。
サワラもよくグリルされているにも関わらず身崩れしていなくて歯ごたえ充分。
日本のイカ飯のごとく、
ご飯の代わりにオックステール・シチューがイカの身に詰められている一品も
もちろん初めて食べたけれども、珍奇なだけじゃなく最高に美味い。
食事を終えて一旦部屋に戻った後、
予約の20:30ちょうどにフロント経由で「サンクチュアリ・スパ」へ向かう。
エントランスの奥、
ライブラリの横にある階段を昇っていくとそこは見事に別世界であった。
夕闇の中うっすらと照明が灯された幻想的な石造りの空間。
そしてここにも小さなプールが2つといくつかのデッキチェアー。
サンクチュアリ・スパのロビー |
雰囲気に少々面食らいつつ、ウェルカム・ドリンクのグァヴァ・ジュースをグッと飲んだら、
正面カウンターに立っている恰幅のいいおばちゃんに促されるままに
男女別のロッカールームへ。
ここで人間ドックの時に着るような薄いガウン状の衣服に着替えた後、
いざスパ本部へと侵入。
まずは妻と2人、
並んで椅子に座って何らかのパウダーとお湯を使ったフットマッサージを受ける。
ちなみに僕の担当は受付にいたパワフルなおばちゃんで、
妻の方は若くて細めの女性エステティシャンが受け持った。
さすがのパワーでちょっと痛い。
それが終わるとベッドに横たわり、メインイヴェントのフェイシャル開始。
いろんな粉とかオイルとかキュウリとかを顔に塗りたくってコースは進められる。
横になった状態でも手足のマッサージがなされ、思わず少し寝入ってしまった。
気持ちよかった。
ボンヤリしつつ部屋に戻り、でも少し本などを読んだりした後、23:00頃就寝。
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