兵庫県立芸術文化センターに行ってコンサートを聴いてきた。
そらみを家族に迎えてから、休みの日にこうして出掛けてエンターテインメントを楽しむ機会は激減したが、村治佳織さんのアランフェス協奏曲に加えて、去年一躍その名を轟かせた反田恭平さんのショパンが聴けるというので、馳せ参じた。

アランフェス協奏曲はいきなりギターのソロイントロから幕を開け、あの静寂の中、満員の聴衆を前に…と想像しただけでちびりそうになるが、一流のプロに対して余計な心配にもほどがある。
哀愁を帯びたメロディラインが印象的な第2楽章はよく知られているが、第1、3楽章はこんなにも軽やかな雰囲気だとは初めて知った。
続いてはメンデルスゾーンの交響曲「イタリア」。
指揮もイタリア人のガエタノ・デスピノーサさんというマエストロで、陽気なキャラクターであろうことが背中越しにも感じられる。
例えば佐渡裕さんが大きな体を活かして力強くタクトを振るのとは対照的に、軽快な動きでジャパン・ナショナル・オーケストラを率いていた。
特にラストの第4楽章では、マエストロもオーケストラもノリノリなのが伝わってきた。
そして満を持して反田恭平さんが威風堂々と登場。
演目はピアノ協奏曲第1番 ホ短調だったが、ショパンのピアノってこんなに音数多かったんだ、と、どちらかといえば小品を多く聴いていた自分にはちょっと衝撃だった。
そしてまだ20代ということが信じ難い、底なしの深みを感じさせる表現力。
既に巨匠の風格さえ身に纏っているような、さすが世界2位。
ラストのアンコールは、村治佳織さんのギターと反田恭平さんのピアノ、そしてなんと今まで指揮台に立っていたマエストロのガエタノ・デスピノーサさんが団員のヴァイオリンを拝借して小脇に抱え、トリオ編成でピアソラのアヴェ・マリアを演ってくれた。
当初予定していたスペインのオーケストラが来日できず、急ぎ曲目を含めて編成し直された東芝グランドコンサート2022だったが、もちろんチケットは完売で満員御礼、私も心より満足してホールを後にすることができた。 |