![]() ![]() ![]() 「今まで、ようやってくれた! 本当にお疲れさまでした。と、いうことで乾杯!」 ここは、大阪市内の某居酒屋。 こぢんまりとした飲み会が始まった。 約3年もの間勤めていた出版社をいよいよ退職。 同じ部署のみんなが俺のために送別会を開いてくれたのだ。 開始間もなく、端の席から、直属の上司がビール瓶片手に近づいてくる。 上司といっても、まだ31歳で、26歳の俺とはさほど年の差もなく、 それ故、俺が最も慕っていた人物であった。 上司「短い間やったけどお疲れさま。まぁ飲みぃや〜」 俺「どうもすんません。いや〜今まで、迷惑かけっぱなしでしたわ〜」 上司「全然かまへんよ。で、おまえ辞めた後どうするん? どっか(就職)決まってんのか?」 俺「いや、決まってないっすよ」 上司「じゃ、どうすんの?」 俺「いや、海外放浪しようかな〜と思てますわ」 上司「…」 固まってしまった。 想像外の俺の発言に、ぐうの音も出ない、といったところだろうか。 海外放浪、それは昔からの俺の夢であった。 誰しもが旅に憧れを抱く思春期。 俺も例外ではなく、広い世界に興味を持った。 目の前に現れるのは、見たことも無い土地、空、人…。 うーん、考えれば考えるほどロマンチックだ。 そして、それを実現できるチャンスがついに到来。 多分、後にも先にもここしかないだろう。 場所は、ラテンアメリカ。 そこには、魅惑と情熱のサルサが待っている。 サルサとは、キューバを発祥とし、今ではラテンアメリカ全域で踊られている、 男女がペアになって踊るダンス。 俺がサルサと出会ったのは、大阪は長堀橋のサム&デイブというクラブ。 軽く飲みに立ち寄っただけだったのだが、 その日、たまたまそこで行われていたサルサの情熱的なパフォーマンスに、 完全に魅せられてしまった。 その後間もなく、仕事の合間を縫ってサルサ教室に通い、 どっぷりその世界に浸かることになった。 そんなサルサをテーマに、本場、ラテンアメリカを巡る。 それが俺の旅のプランなのだ。 その辺りを上司に説明すると、 上司「…まあ、殺されへんよう気いつけや〜」 う〜ん、まだ、分かったような分からんような様子だ。 その後も飲み会は続き、俺もみんなとの最後の夜を楽しんだ。 海外気をつけて、といった声もあり、帰ってきたらちゃんと働きや、といった声もあり、 別れを惜しむ声…は、あまり無かったが、それもまた良いじゃないか。 やがて、宴もたけなわに送別会は終了。 最後の別れを皆に告げると、いよいよ新しい世界の幕が開けた気がしてならなかった…。 次へ ![]() ![]() |