冒頭から、「来た来たこれぞ酉島伝法ワールド」と、否が応にも期待は高まる。
熟語の漢字を同じ音を持つものに置き換え、この世界観を構築する礎を積み重ねていく手練手管には脱帽する。
しかもそれが、「どこまで続くねんこれ!」と呆れるぐらい延々と繰り出されるわけで。
途中、酉島氏自らの手による挿絵がいくつも挟まれ、異形たちの”正しい”姿を見ることができるというのもいい。
作中世界に没入して耽溺するという点においては超一級なのだが、肝心のプロットは雑というか読者の想像を超えるブッ飛びに欠け、実に惜しい。
例えば同じSFでいうなら、「星を継ぐもの」のような、あたかもすべてが設計されたポジションに嵌まっていくような様式美はなく、伏線の回収やオチのつけ方等は甘い。
いつか「これだ!」と激賞するような、あるいはぐうの音も出ないような、完璧に仕立てられた酉島氏の長編を読みたいものだ、と切に思う。 |