海洋空間佳本


星を継ぐもの 星を継ぐもの」★★★★★
ジェイムズ・P・ホーガン
東京創元社

2016.2.22 記
今更ながら読んでみたが、実に面白かった。
かれこれ40年近く前に著された作品なのだが、そのプロットはまったく古さを感じさせず、引き込まれっ放しで一気に終幕まで辿り着いた。
ハードSFの真骨頂と言われるだけあって、例えば先進技術について細部に渡って書き込まれてはいるが、これ以上突っ込むとマニアックになってしまうのでは、という危惧に至る段階の寸前で抑えられているバランスが絶妙。
未知のテクノロジーを、充分なリアリティーを持たせながらも、難解に過ぎることなく描写している。
情報工学や物理学のみならず、宇宙や生物、歴史などに興味を持つ読者にとっても、感性を刺激されることだろう。
地球にとって唯一の衛星、月の持つ神秘性に関しては古来、諸説語られてきたが、その起源についても大変読み応えのある解釈が与えられている。

SFの王道を堂々と突き進み、また物語にミステリー的な要素も巧みに取り入れて、質の高いエンターテインメントとしても成立する筆力で展開しながらも、その根底に“私たちはどこから来たのか?”という、哲学的かつ骨太な命題を敷き、ラストも小手先のテクニックや誤魔化しに走ることなく、見事な大団円にまとめ上げており、これぞジェイムズ・P・ホーガン氏の作家性というものが余すところなく詰め込まれた完璧なデビュー作だと感じた。





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