海洋空間佳本


鉄鼠の檻 鉄鼠の檻」★★★★★
京極夏彦
講談社

2006.11.26 記
京極夏彦氏の各作品は、尋常じゃない分量の紙幅に、練りに練られたプロットと、多岐に渡る膨大な薀蓄を内包している。
この「鉄鼠の檻」は、その薀蓄部分が最高度に昇華されている作品であると思う。
狂骨の夢」と併せて、京極氏の宗教というものに対する価値観、ひいては人の生をどう捉えているかということが、抽象的ながらも如実に現れているのではないか、と感じられる。

一群の作品に表現される氏のそういった類の言い回しについては、少なからず“衒学的だ”とする向きもあるが、それもここまで極められれば充分に職人技だ。

山口雅也氏の「続・日本殺人事件」内の1篇『実在の船』と読み比べることも一興と私は思った。





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