率直に言って、「日本殺人事件」は凡庸な作品であると思った。
この「続〜」も、半ばを越えるまでは実はそのような思いは拭えなかったんだけど、『実在の船』に入ってから感触は一変。
他と比べることは甚だナンセンスなことであると思うが、それを承知で述べると、京極夏彦を想起せずにはいられない設定と言い回し(そもそも文字数が違い過ぎるのであれほどの拡散ぶりはないが、コアだけで見劣りせず)。
理にまつわる両者の決定的な見解の相違はあるけれども。
いや、それとてひょっとしたら表現のテクニック上の違いであって、詰まるところ同一なのかもしれないな。
実質的デビュー作「生ける屍の死」に見た危うき天才性を、最後に存分に感じさせてくれた。 |