まさにツール・ド・フランス開催中に読むというグッドタイミング。
長編前作の「エデン」に続き、再び最高峰のグラン・ツールが舞台で、伊庭はもちろん、ミッコやニコラといったキャラクターたちも再登場し、いい意味でのマンネリ化、シリーズとしての成熟感も出てきたように思う。
ランス・アームストロングに着想を得たであろう、ドミトリー・メネンコなるダークヒーローが絡むストーリーはミステリー色が強く、ロードレースならではの不文律やレースの描写も依然として上手く料理してはいるが、これまで以上に自転車以外の要素が占める物語の内のウェイトが増しているような印象も受ける。
序盤、ニコラとドニにまつわる過去のエピソードがいきなり重要なキーとなるから、「サクリファイス」→「エデン」→今作と順に読むことが強く推奨される。
安定した高品質、特に自転車に乗る人にとってはたまらない読み物だ。 |