海洋空間佳本


スペース金融道 スペース金融道」★★★★★
宮内悠介
河出書房新社

2026.1.30 記
連作の劈頭を飾る表題作はかつて「2010年代SF傑作選2」で知ったが、6年ぶりの再読という事実がまったく気にならない、それほど面白い。
各エピソードの構成自体は類型的とも言えるが、ずばりと読者の関心を鷲掴みして惹きつける技術が存分に活かされたものなので、むしろそのパターン化が好ましいぐらい。
何より、ツカミが上手いというのは、エンターテインメントにおいては非常に強い点。
著者が提唱? する"量子金融工学"なる新分野は、その道の専門家からすればツッコミどころがあるのかもしれないが、私のような素人が説明を読んで、なるほど…! と深く感心してしまうには十分過ぎる説得力を持っている。

どこまでいっても欲が尽きない愚かな人間という存在と、そんな人間の産物でありながらピュアで賢明なアンドロイドという対比が、全編を通して根底に敷かれているように思うが、とりわけ、遥かに科学技術が進んだ末に未来の社会が帰結する選択肢が、人間の対照である動物であり植物であり自然であった、という締め括りは極めて示唆的であるように思う。





戻る

表紙