海洋空間佳本


2010年代SF傑作選2 2010年代SF傑作選2」★★★★☆
大森望、伴名練 編
早川書房

2020.5.17 記
1と比べてヴェテラン陣が多いということで、やはり全体的な安定度は高いと感じた。
まず並べ方が巧みというか、冒頭からの「バック・イン・ザ・デイズ」(小川哲)と「スペース金融道」(宮内悠介)の握力が十二分で、特に「スペース金融道」には笑わせてもらうとともに、感服した。
さすが。
カフカの「変身」を連想せずにはいられない「環刑錮」(酉島伝法)は、きっちり酉島ワールドとして仕上がっているし、「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」(柴田勝家)が描き出す世界の有り様は、奇しくも新型コロナウイルス禍に喘ぐ現在の世の中が重なって仕方ない。
序盤は特に心を掴まれなかった「トーキョーを食べて育った」(倉田タカシ)だが、後半に入る頃には古川日出男氏の綴る文章が想起され、噛めば噛むほど味わい深くなるといったところ。
「従卒トム」(藤井太洋)、「11階」(小田雅久仁)といった、じわりと感動を誘う小編をこの位置に置いているのも、やっぱり上手い。
ただ、「11階」に関しては、カテゴライズするならSFではなく完璧にホラー作品ではないかな、やっぱり。
また、現在活躍しているSF作家の中には、伊藤計劃氏の影響を受けている人が本当に多いということもよく分かる。





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