ようやく出たぞ、第2作。
第一次世界大戦後の日本をモデルとしたパラレルワールドもの…? と冒頭で感じつつ読み進めたら、ライラという何か別の作品を連想してしまいそうな名を持つ主人公の少女が、異界と現世を行き来するという、よくある設定のファンタジーに突入していったな…と、一抹の不安とまでは言えぬが何やらアラートのようなものに捉われる…。
が、終わってみれば、昔話のかぐや姫伝説に始まり、果ては関東大震災にタイタニック号のエピソードという史実まで、風呂敷を広げて欲張りにも取り込んだ、高い視座を持つ物語であり、読み応えがあった。
後半、姉弟子のトキが"リッチ"と化し、次いで師匠であるクダンは"レイス"になぞらえられた上で、ライラが彼女たちと互いに魔術を繰り出しながら戦う場面では、前作「迷い家」でも見られた、RPG的な要素が強く感じられ、嗜好が同じ向きには面白く受け止められるだろう。
始めから終いまでことごとく平仄を合わせてカタルシスをもたらす緻密な類の作品ではなく、善悪や正邪といった二分論に縛られない混沌とした価値観の下で展開される、妖しくも美しい幻想世界に耽溺することこそが、この小説を味わう真髄であるように思う。 |