海洋空間佳本


狛犬ジョンの軌跡 狛犬ジョンの軌跡」★★★★☆
垣根涼介
光文社

2015.7.21 記
単行本発売が2012年の割には、どうも初期の垣根涼介氏っぽい文章だな…、と思っていたら、実は「ワイルド・ソウル」よりも以前に原型が書かれた作品だった、と著者あとがきで明かされており、合点がいった。

神社の狛犬が何かの拍子で生身の体を得、生命体として動き回る、という設定がまず面白い。
その狛犬と濃厚に絡む2人の登場人物も、いかにも垣根氏らしい書き込みで、充分に魅力的に造形されている。
狛犬を含む各キャラクターたちの行動原理については、ちょっと首を捻ってしまうくだりもあるが、作者の膂力でねじ伏せ、"読ませる"物語に仕上げている。
狛犬を、"帰る場所を持たない何者か"の象徴として締めているラストも、やや強引ではあるがそこまでの作中に読者が感情移入できていれば、違和感なく読み終えられるだろう。





戻る

表紙