海洋空間佳本


走ることについて語るときに僕の語ること 走ることについて語るときに僕の語ること」★★★★☆
村上春樹
文藝春秋

2012.4.17 記
走り始めた頃から読みたいなあ、と思っていた本なのだが、遅ればせながらようやく読了。
ご自身も書いておられるように、これは一種のメモワールなのだろうが、いささか期間が限定的なので、その意味では少しもったいなく感じ、さらに長いスパンで追っかけた続編なんかも読みたくなる。
最末端ながらランナーの端くれとして、走っている時に考えていることや、走る目的そのものに関する村上氏の記述等には強く共感できる。
ランを通して、著者のプライヴェートな部分や内面にまつわる描写、ちょっとした自己分析等が垣間見えるのも面白い。
と同時に、自らの怠惰さ、努力の不足を猛省させられるという、エッセイとしてはなかなか稀有な一冊でもある。

村上春樹氏の文章を読んで思うのも変な話だが、古川日出男氏にはやっぱり「アラビアの夜の種族」や「ベルカ、吠えないのか?」といったテイストの作品をどんどん書いてほしいなあ、と改めて感じた。
賛否あるだろうが、私は特に近年の古川作品は、少なからず村上春樹の影響下にあることが表に見えてしまっていると思っているので。





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