バブルが弾け、沈んだ景気を日本全体が引きずってしまったような平成の30年間余りを、時代を象徴する社会問題に絡めて振り返るクライムノヴェル、とでも表せるか。
例えば著者の代表作の1つと言える「絶叫」と比してみると、エピソードや作品全体のテイストがやや類型的と感じられ、またブルーを巡るラストシーンがあまりにも安直で拍子が抜けたが、この小説はブルーではなく奥貫綾乃の物語なのだ、と捉え直してみると、一気に深みが増すような。
途中で彼女が登場した時、ああこんな風に絡ませてくるんだ、と面白く読んだが、まさかここまで重たい位置を今作で占めるとは。
どうやら奥貫綾乃も藤崎司も本書で打ち止め、という気配でもなさそうだから、緩いシリーズものとしても楽しみかも。 |