海洋空間佳本


絶叫 絶叫」★★★★☆
葉真中顕
光文社

2019.7.18 記
偶然にも私は主人公の鈴木陽子と同じ年の生まれなので、彼女がひたすら堕ちていく過程に映る時代的背景が手に取るように分かってしまう。
プロット、構成、展開、オチとどれをとっても、読者の予想の斜め上をいくような奇想は見られないが、一方でそれらの要素すべてが高い水準にあり、途中で幾度も「お?」とページを戻って読み返させられるあたりは、さすが。
その振れ幅はフィクションなのでデフォルメされてはいるが、誰もが辿る可能性のある人生のアップダウンを、時に目を背けたくなるほどのリアリティを伴って描く手腕は確か過ぎる。

得てしてこの類の小説は後味が悪いことが常だが、今作は極めてヘヴィでありながらも、その結末はなんだったらちょっと爽快ですらあるのが、意外と快い。





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