予備知識のない段階では、漠然と「流」(東山彰良著)のような壮大な長編かな…と勝手に想像していたが、これほどモダンで読み易いミステリー連作だとは、少し驚いた。 まさかの展開でいささか読者を煙に巻く、アームチェアディテクティヴものの小話でまずはしっかりとツカみ、そこから時代を遡っていく形で徐々に事情を明らかにしていく構成。 著者もあとがきで述べているが、香港の歴史に疎い私のような読み手にとっては、エンターテインメントでありながらその勉強にもなる。 全編通してプロットは複雑で込み入った部類に入り、ラストの物語の主人公はコイツかよ! という少し”やり過ぎ”のところもあるような気はするが、冒頭作の他、ダイナミックなアクションを絡めたり誘拐ミステリーに仕上げたりとヴァリエーション広く、また訳文も違和感を抱かせず、楽しんで読了することができた。 |