海洋空間佳本


流 」★★★★☆
東山彰良
講談社

2015.10.4 記
もちろんフィクションの小説ではあるが、著者の生まれ育った境遇なしには書き得ない物語なわけで、そういった意味では、東山彰良氏のこれまでの半生を投影した渾身の作、と言えるかもしれない。
創作であっても、自分の経験や価値観や感覚を、濃淡あってもそこにある程度ブチ込まなくては形にならぬ、換言すれば裸にならざるを得ない、作家という職業にはいつもながら敬服する。

時間的には第2次世界大戦をまたいだ、台湾と中国と日本の複雑に絡み合った関係性が、1人の当事者の立場からまったく気負うことなく、フラットかつ冷静に綴られている。
どんな問題においてもそうなのだと思うが、却ってその渦中にある人というのは、直接的な関係を持たない傍観者よりも冷めていて、極めて感覚的でありながら理性的である、というシンプルな物の見方をしているのではないだろうか。
そうしなければ立ち行かなくなり、生きていけなくなるだろうから。





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