海洋空間女であり過ぎた女の日常



第16回 後ろバッテン   2003.10.5



自転車で強盗を働いた女性が逮捕された。
この女性と付き合っていた男性、
「すぐにヒステリックに喚いて暴れた」と、彼女の性格をコメントしていた。。。
このような女性は結構どこにでもいるかもしれない。
何か事件を起こさないにしても。

ファミレスでバイトしていた頃の話だ。
当時で37、8才の独身のオバチャン
(自分を棚上げしていうのもなんだけど、この呼び名がピッタリなんだ)が店のパートでいた。
初めて会った日の衝撃を今でも忘れる事ができない。

体重80キロくらい??
茶髪がファミレスのバイト、パートにまでスタンダードに浸透していた昨今に、
あくまで異議を唱えるべく真っ黒な髪
これを耳よりは下、顎のラインギリギリでスパッ!
と切りそろえたワカメちゃん風おかっぱヘア〜が沖縄出身のこい〜顔を縁取っている。
ハッキリ言って怖い…。

もっと怖いのは、ピンクのワンピースに白いエプロンという制服だったが、
後ろバッテンにするでしょ?エプロンの紐を、肩から。
太っていたから、バッテン部分がタスキのようになってんだもん。
そんな後ろ姿、初めて見たオイラは、
今後この店での思い出が「後ろバッテン」という一言で終わりそうなイヤ〜ナ予感がした。





的中。



一緒に仕事をし始めたが、一応リーダーのようになっているオイラが気に食わなかったらしい
(あ、他の店舗にいたのですが、異動してきたのです)。
「アタシより後に来て、年下なのになんでアンタが偉いとゆ〜のよ!」オーラがビンビンで、
正直「助けて!誰でもいいから助けて!」と毎日心の中で叫んでおりました。

当時(今もかな?)クッキーセットという、飲み物とクッキーのセットがあって、
ティータイムにはピッタリなので注文が入る。
結構、売り上げのある店舗だったから、ティータイムと言えどチョイ忙しい。
注文をとったオバチャン、早く動くことで頭がいっぱい
(オイラと張り合っていたらしい)だからか?
ものすんごく雑にクッキーののった皿を放り投げたため、
皿がサーッとテーブルを滑ってお客様の前で止まる
見事だ。

って、おいっ!!

てめぇは西部劇のガンマンかなんかかよっ!!

ショットグラスをカウンターに滑らせてるんじゃねぇんだよっ!!

メニューを横にして、お客に手渡すのではなく、投げる
あたかも手裏剣のように飛んでいくメニュー、受け取るお客…。

おーいっ!!
てめぇ、クノイチだったのかよ!
沖縄出身じゃなくて甲賀出身かぁああああ!
戦国時代じゃねぇぞ、ただのランチタイムだから、投げんなッ!!!

お客様が困った顔でオイラを見る。
目が合うので、スミマセンという風に頭を下げる私…。
そんな風によくお客様と目が合って、まるで日常的にお客様とアイコンタクトしているよう…
って、いったい何屋なんだよオイラ?
ここは、サッカースタジアムかぁ?

ランチタイムのちょ〜忙しい時間に、まぁた何かをやらかした。
お客様のイナセな肉体労働アンちゃんに呼ばれて行ってみる
従兄弟と同じタイプ第1回第12回参照)だから、
 許してくれそうにないだろう〜な〜と憂鬱になりながら)。

「アンタがやったわけではないけどね。
 ひどいんじゃないの?あの態度。
 こっちは客よ? 客商売で金取っているのにさ。
 あんな態度ってどうなわけ?」

はい。ごもっともなんです。
すみません。
せっかく食べに来てくれたのに、不快な思いをさせて、本当にすみません。

「いや、君を責めてもしょうがないけど、一緒に働いているんでしょ?
 なんで辞めさせないの?

できれば、そうしたいのですけど、
仕返しされそうで怖くて誰も言えないんです(←心の声)。
ちょ〜忙しいランチタイムでの20分間、クレームに取られる…。

因みに、この頃クレーム満載な日々のおかげで妙にクレーム対応が上手になり、
真剣に怒ったお客様から、後に随分と可愛がられるようになった♪
「また来たよ〜♪」
てな感じでおばあちゃんや奥様、サラリーマンの方々から声をかけられるという、
オイラの「助けてくれ!」な日常に大きな慰めとなったから続けていられたのかも知れない。

それはさておき。

とうとうデカイ事件を(いつもデカイことしてんだけど)起こしてくれました。

クソ忙しいランチタイムの真っ只中、
レジのところで中年のカップルが30分以上、もんのすげぇ怒りを支配人にぶつけていた。
支配人が謝っても謝っても許してくれそうにない怒りようだ。
横から漏れ聞いた分と、他のバイトに聞いたところによると、
お客様にお水のお代わりをサービスした時に洋服にこぼしてしまったらしかった。
その時のオバチャンが

あぁ、ゴメンなさい。水だから大丈夫でしょ」というニュアンスの言葉と態度だったらしい。

…水だから、染みにはならんかも知らんが、そうじゃねぇだろう!

どうしてあんなのを辞めさせないのよ!」といういつものフレーズ。
このお客様、常連の方だったので腹に据えかねていたらしい。
後から来た社員に聞いたところによると、
オバチャン物陰からこのお客様の怒っている様子を見て「かなり怒っているわねぇ」とニヤニヤ

はぁ?それって、アンタが怒らせたんじゃないの?と社員は思ったそうだ。
「なんで、他人事のように言えるんでしょ。理解不能です」

さて。
この店から100メートルくらい離れた場所にデ○ーズというファミレスがあったのだが…。
「ひょっとしてデ○ーズの回し者か。うちを潰しにきたのかぁ?」
と、この事件後、冗談まじりに噂が流れた。
いや、ほんとそうも思いたくなるほど。

不思議だったのが、それでもオバチャンは辞めさせられませんでした。
やっぱ、世の中で一番強いのは、何も気にしないオバチャンだぁ。

生まれ変わったら、そうなりたい(ウソ)。






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