海洋空間女であり過ぎた女の日常



第12回 展覧会の絵   2003.8.11



従弟のノブチャンが遊びに来た。
それはいつものことなんだけど、いつもと違ったのは、仕事帰りだという、そのイデタチ。
見た途端、のけぞった(>_<)
坊主、髭、サングラスはいつもの事だが、ズボンはニッカ(知ってる?)。
まぁ、それはいいとしよう。
上半身が、鮮やかな唐草模様と言ったらいいのか。
ヤクザの刺青がそのまんま模様になりました、という風情の長袖襟無し開襟シャツ。

…怖いんだけど。

マジ、見かけが怖いんだけど…。

人間、怖いものや想像を絶するものを見ると、笑いがでるのは何故ですか?

大笑いしてしまいました。
怖くて。。。
従弟は、なんで突然笑い出すのコノヒト?て感じで、
「何、おまえ?」
「いや、怖くて」
「何いってんの。仕事着だぞ、これ」
「ハハハ。これ、手作り??」
ハァ?って顔をした後、コイツは俺の服で笑いやがると気付いた従弟。
ムッとして、
「買ったに決まってるだろう」
「どこに売ってんの??」
「教えナ〜イ!!」
唇突き出した憎たらしげな顔でいわれちった。

アヤがトイレから帰ってきた。
従弟を見た途端、
「きゃ〜〜、怖〜い!どしたの!コワ〜イ!!」
と大笑いしながらコワイコワイを連発。
「どこに売ってんの?」とアヤが聞く。
親子で同じ事を聞いてんなぁ。
それが余計にしゃくに障って、
「教えない!なんか、むかついてくるなぁ。
おれはピエロかぁ?笑われに来たんじゃねぇんだぞ」
「てか、そんな服売ってんだぁ。んで、買う人いるんだね〜」
「ばか、俺の周りの仕事してる奴、みんなこんなだ」
「そのカッコで集団で電車乗ると、混んでいても混んでないでしょう」と私。
「電車乗んないもん。
でも、道を歩いていたら、サーッと避けてくれるから、助かるな。歩きやすくて」
笑っちまう(^o^)
「ママ、コンビニで何か買ってくるものない?
あったらアヤ行って来るから、ついでにカメラ買ってきていい?
「前、カメラあったぢゃない」
「現像にだしちゃったの。もったいないことしたなぁ、まだフィルムがあったのにぃ。
ノブチャン写真に撮りたい
「あ、ならカメラだけ買ってきていいよ」
「お前ら、ふざけんな!
俺を撮るためだけにカメラ買うのかよ!おかしいんぢゃない?」
「いや、こんな珍しいのは記念に残したい…アハハハハハハッ!」
「…この家、鈍器とかない?なんか腹たって一発殴りたいんだけど」

笑いの発作がおさまって、飲みながら仕事をすることは厳しいな、という話題になる。
TVをつけていたのだけど、TVをみながら、
「俺の仕事、ヤローばっかじゃん。
まだこっちにいるなら街歩いているお姉さんとか見かけるけどよ、
この間ダムの工事で3ヶ月、山の中にいただろ?もう、気が狂うね」
「男ばっかで?」
「それもあるけど、仕事が大体夕方頃終わるだろ?
そっから飯食って、後はTV見ながら飲むしかやることがねぇの。
で、TVに綺麗なお姉さんがいっぱい映ってんのに、周りをみるとヤローばっか。
しかも職人だけだろう?もう、目が合うと喧嘩が始まるんだわ。
『なんだ、てめぇ、コラァ!』って。
ウワーッって騒ぎが1週間を過ぎると、もう毎晩になるんだ。気がおかしくなるよ」
「あ、こないだ行ったとこの話?」
「そう」

従弟によると、職人は気が短く、どっかの組か?
って感じの彫り物を背中にしょっているのが大半だという。
仕事着の袖から、なにやら綺麗な色が出ている。
それを見て、従弟はうわー、大変なところに来たぁと、ますます憂鬱になるそうだ。
そして、風呂タイム。
湯船に浸かりながら洗い場をみると、
背中に彫り物した奴らがバン、バンと並んで、綺麗に色の入ったものや、
素彫りでやめてんのや、もう少しで完成とか、いろいろ鑑賞できるそうだ。
そして、やっぱり見事な絵もあって、なかなか見ごたえのある風呂タイム。

「展覧会?」

「そ。入場無料のな」

仕事が無事終了し、
山から帰ってくる途中に見かけるお姉さん達が、やたらと美しく見えて困ったそうだ。
そして突然アヤに向かって、
「職人と結婚は、絶対しない方がいいぞ。ろくでもねぇのばっかしだからよ」
そう締めくくった。
いまいち、話がすっきり繋がらないけど、喧嘩の他に何をやっていたのでしょう?
この男どもは?

ぽつんと一言、
「熊を殺して食ってきた」






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