海洋空間マレーシア旅行記



第3日
2004年8月15日(日)
     2004.10.16 公開

早起きするつもりだったんだがついつい二度寝してしまい、8:20完全起床、
急いでビュッフェ・ブレックファストを済ませる。

ホテル内のプールをバックに
朝のプールサイド

ホテル内のガーデン 部屋の入っている建物をバックに
広大なガーデンで バックの建物内に客室などが入っている

今日はこのたびのマレーシア旅行で一番楽しみにしていた、
オランウータン見学があるのだ。
オランウータン”とはマレー語で“森の人”という意味があるように、
この地方特有の稀有な霊長類である。
各種ゴリラチンパンジーなど他の高等霊長類同様、
自然の世界では絶滅寸前と言っても過言ではないぐらい生息数が減っている
オランウータンの孤児をここラサ・リア・リゾートが広大な敷地内で飼育、
将来的には自然へと戻すべく管理をしているということなのだ。
蛇足ながら、先述のゴリラチンパンジー然り、
他にもチータートラヒョウサイウミガメサンショウウオ
アマガエルからイワシに至るまでとてもここでは書ききれないほど、
日本の動物園や水族館で我々が普通に目にできるような動物たちの中にも、
絶滅が危惧されている希少種というのものは実はかなり多い。

9:30、集合場所である自然保護区入り口へ。
一昨日の晩、野性動物の観察に出向いた場所だ。
そこから山道を汗かきながら登って行くこと数分、
いました、世話係のレンジャーに面倒を看てもらっているオランウータン2匹

ラサ・リア・リゾート内で保護されている2匹のオランウータン
ラサ・リア・リゾートで保護されている2匹のオランウータンの孤児

ここでは親のいない孤児を保護して育てているということなので、2匹とも子供、
1匹は生後数ヶ月ほどの赤ん坊、もう1匹は2〜3歳ぐらいなのかな。
ちょうど餌を与える時間帯を見学の時間帯に充てており、
2匹ともレンジャーの手から渡される果物やミルクに夢中である。
ちなみに一般見学者がオランウータンに触れることは禁止、
もし近寄ってきても逃げてください、とのこと。

見学用のデッキからオランウータンを眺める
見学用デッキからオランウータンを見る観光客一同


大きな方の子が小さな方をいじめたり餌を横取ったり、
また小さい方は助けを求めてレンジャーに必死の形相でしがみつき
大きな方はその様子にすねてみたり、まるで人間の兄弟のような光景に
見学客一同穏やかな笑みが漏れる。

小さな方のオランウータンは飼育係のレンジャーに甘えっぱなし
飼育係のレンジャーから離れようとしない小さな方のオランウータン

小さな方の子は本当に飼育係のレンジャーに甘えきっている。
完璧に親と思い込んでいるようだ。
30分ほど観入っていただろうか、山を下りる。

今日はホテルを移動するのでチェックアウトを済ませ、11:15にロビーに集まる。
その時にまたもものすごい勢いでスコールが降ってきた。

突然のスコール
突然のスコールにも現地の人たちは慣れっこの様子

高い屋根のみで、壁のないホテルのロビーにも容赦なく雨は降り込んでくるが、
従業員たちもすっかり慣れた様子でイスやテーブルを移動させている。

バスに乗り込んで、まずはランチへ。
「de Square Cafe」という名前の、寂れたビルの1F にある中華風レストラン

この日のランチをとったレストランの外観
ランチをとったレストラン外観

やっぱり中華風が多いのかな、またも円卓だし。
そして料理の満足度という点では
昨日の円卓中華をはるかに下回る具合であった。
供されたのはナシゴレンサテー麻婆豆腐デザートのみという、
予想と期待を見事に裏切る肩透かしに一同大ブーイングだ。
トイレに行ったら入り口の前に集金ババアが座ってるし。
建物の中にある普通のトイレなのに、使用料を取るというのだ。
そんな但し書きは当然どこにも書いてないし、どうせ乞食の言いがかり商売、
腹立ったから「高いんじゃ、そんな金はなあい!」と言って払わなかった。
これも飯が美味かったら気持ち良く払っていたかも知れん、
ババアよ、文句があったらレストランに言うのだ。

その足でバスは次なる宿泊地、
シャングリ・ラ・タンジュン・アルー・リゾートへ向かう。
ここも前宿泊地と同じシャングリ・ラ系列の超豪華リゾートホテルだ。
ラサ・リア・リゾートからは車で1時間ほどだが、
こちらの方がよりコタキナバル市内中心街に近い

ここでせっかくなのでコタキナバル周辺の印象をまとめて。
まず一様に目立つのは前述の通り、工事開発現場の数々
それもそのほとんどがかなりの大規模工事。
今後数年のうちに、さらに巨大な建造物が
続々と現れていくのであろうことは明白だ。
また、ここらの民家は大体が高床式だ。
古代日本の高床式倉庫のようにネズミ返し、というわけではなかろうが、
恐らくは湿気防止と虫除けのためなのだろうと思う。

道路に信号はほとんどない
諸外国によくある例だが、比較的大きな交差点にも信号はなく、
代わりにロータリーになっている、という箇所がここコタキナバルにもよく見られた。
実際に昨日、
キナバル公園からポーリン温泉まで出向いたロング・ドライヴの間にも、
信号はただの一つもなかった
ちなみにマレーシアは旧英連邦領なので左側通行、車は右ハンドル。

あと、車窓を眺めていて非常に目についたのが、マレーシア国旗
学校や役場関係、ホテルと思しき建物などなら意味も分かりやすいが、
のみならず民家やアパートなどの家々、それに自動車のポールに至るまで、
これでもかと国旗が掲げられていたのだ。

これがマレーシア国旗
これがマレーシア国旗

学校にも国旗がズラリと
国旗がズラリと掲げられたとある学校

何と愛国心旺盛なのだろう、マレーシア人は!と内心驚いていたわけだが、
実はその驚きの半分には若干の理解不足が介在していた、
ということがガイドさんの話を聞いて分かった。
8月31日マレーシアの独立記念日に当たるらしく、
それゆえ毎年8月は全国的に愛国精神が高度発揚する月間なのだとのこと。
なるほど、よく呑みこめた。
でもそれにしたって人家の軒先の8割方以上に国旗が掲揚されているというのは、
素地に強固な愛国心がなければ見られる事態ではない。

それと関連しているのかどうかは分からないが、
マレーシアでは毎晩深夜0時(もしくは毎時0分?)、
テレビで国歌を映像付きで放映していた。
曲調も非常にポップな感じで楽しげで、
歌詞テロップも乗せてまさにプロモーション・ヴィデオといった風に
男女混声合唱にてお送りされる国歌斉唱、ボクも知らぬ間に見入ってしまい、
もう目と耳は釘付け、気がつけば歌詞を見ながら口ずさんでいるではないか。
一瞬本気でCDも探そうかと思った。

最後に人々についての印象を記すと、
事前に何となく想像していたよりも良かった
日本が恵まれ過ぎているとはいえ、
経済状態が比較的プアな国は治安も相対的に悪かろう、
また暑いところの人々は怠け者が多いという先入観も手伝って、
ハッキリ言って少なからず警戒心を身にまとって出向いたんだが、
思っていた以上にずっと真面目で勤勉な人たちが多かったように思う。
もちろんたった数日のパッケージ・ツアーでは裏側はおろか、
表の顔もすべて見たとは言い難いが、
マレーシア人との関係の中で嫌な思いをすることはほとんどなかった。
「こんにちは」「ありがとう」「おはよう」程度だが、
いくつかのマレー語を覚えていったのもよかった。
もちろん公用語である英語でもほとんどの場合
過不足なくコミュニケートはできるのだが、
やはり現地の言葉をこちらがしゃべるとより自然な笑顔で喜んでくれる。

バスに乗った一行はタンジュン・アルー・リゾートに到着、
チェックインを待つ間、ロビーでウェルカム・ドリンクのパイナップル・ジュースで喉を潤す。
ロビーから一歩外に出ると陽光まぶしく、
同時に目に飛び込んでくるビーチとプールに心湧き躍るではないか。

タンジュン・アルー・リゾートもラサ・リアにまけずゴージャス
ロビーを一歩出るとこのように
ゴージャスなリゾート景色が広がっている


部屋に荷物だけ置いてすぐの13:30、再びロビーに集合する。
午後は“リヴァー・クルーズ”という、
小型の船でマングローブ繁る川を上り下りしながら
野生動物観察を行うアトラクションに行くのである。

目的地のガラマ川まではかなりの距離があり、バスは2時間強走る。
リヴァー・クルーズのベースとなる船着場に到着、

“リヴァー・クルーズ”のベースとなるガラマ川の船着場
“リヴァー・クルーズ”のベースとなるガラマ川の船着場

まずはサーヴィスのコカ・コーラとバナナのフライでおもてなしを受ける。
このバナナのフライという代物がとても美味、
ついつい5つほど立て続けに胃に収めてしまった。

メチャメチャ美味かったバナナのフライ
メチャメチャ美味かったバナナのフライ

準備が整ったところでボートに乗り込み、
いよいよ“リヴァー・クルーズ”に出発する。
我々一行はこの時およそ20名、2艘に分乗する。
ボクたちが乗った船は客11人にガイドさん、そして操縦士の計13人。

いざ“リヴァー・クルーズ”に出発の図
いざ“リヴァー・クルーズ”に出発


まさしく本末転倒の表現になってしまうが、
いざ走り出すと何だか気持ちはディズニー・ランドのアトラクション
“ジャングル・クルーズ”のリアル版みたいなカンジ。
本来逆であるべき感覚なのに、哀しき都会人。
川幅は思ったよりも広く、そして流れはゆるやか。
気分も何だかゆったりしてくる。
そんな気分も動物の登場によって一転、嬌声に満ちた興奮に変わる。
少し離れた川岸に姿を現したのは、警戒心たっぷりの小型のサル、カニクイザル
その名の通り、カニを捕まえてバリバリと食べてしまうサルだ。

カニクイザル
走り出して間もなく、カニクイザルが岸辺に姿を現した

それから間もなくして操縦士の若い男が指差した先の樹上に、
このリヴァー・クルーズのメイン・ターゲットであるテングザルがいた。
これもまさに名は体を表す、
テングのように伸びた大きくて赤い鼻がシンボリックなサルである。

樹上のテングザル
樹上でくつろぐ2匹のテングザル
小さくて見づらいが、鼻がテングのように長いのが分かるだろうか?

このサルを見ることがリヴァー・クルーズの第一義、
なかなかに珍しいサルなので必ず見られるとは限りませんよ、
ともったいつけられたテングザルであったので
最初に目撃した時は皆一様に喜んだものだが、
そのプロパガンダはいささか誇大広告だったようで、
2度、3度、4度、5度とテングザルが姿を現すたび、
船上のツアラーたちの反応も野良イヌか野良ネコを見るかのような
落ち着いたものに変わっていったのであった。

次々と姿を現すテングザル
これでもかというぐらい次々と現れるテングザル

しかしそうはいっても決してこのイヴェントが
子供騙しだとかちゃちいとかいう類のものではなく、
日常で体験することはもちろんできない、
貴重で楽しいクルーズであったことは確かである。

相当数生息しているらしいテングザルカニクイザルの他、
川をゆったりと渡るバッファローの群れも見ることができた。

バッファローの群れ
ゆっくり歩くバッファローの群れとすれ違う

見た、というよりか、我々の乗っているボートとすれ違ったので、
じっくりと観察することができた。
アフリカのバッファローよりも少し賢そうな顔をしていたな。
他にも川面にせり出した木の枝に絡まって身を休めていた
ボア(ニシキヘビ)も目撃。
マレーシア人の女性ガイドがヘビを怖がっていたのには笑けた。
たまに出遭うことがあるというワニ、またそれよりもはるかに低確率、
遇には邂逅することもひょっとしたらあるやも知れぬという
アジアゾウを見ることができなかったことは少し残念だが仕方ない。

クルーズは2時間ほどに渡って行われ、その後船着場に戻ってそのまま夕飯だ。
船着場はそのまま「SPI PURA CAFE」というレストランも兼ねているのだった。
夕食はビュッフェ・スタイル、小ぢんまりとしているが野趣溢れており、
大変良い感じだ。
チキンカレー野菜炒めタンドリーチキンソーセージヤギの焼肉
トウモロコシフルーツなど、お腹いっぱい。

船着場での野趣あふれる夕食に大満足
船着場での野趣あふれる夕食に大満足

特に、辛くないカレーがボクには非常に美味、お気に入りだった。
徐々に陽が沈み、やがて真っ暗になっていくリヴァーサイドでの野外食、
残飯をねだりに来る野良ネコもひっくるめて非常に心豊かなディナーとなった。

テーブルの上に乗って残飯を喰らう野良ネコ
テーブルに乗って残飯を喰らう野良ネコ


再び2時間バスに揺られ、ホテルに戻り着いたのが21時過ぎ
皆さんかなりお疲れの様子だ。
ボクらは一旦部屋に戻り、
ウェルカム・フルーツのマンゴーやモンキーバナナなどを食べて一休みした後、
ホテル内散策に出る。

敷地内を一回りした後、「BLUE NOTE」があったので入る。
BLUE NOTEはご存知、
日本ではジャズの生演奏を主体とするライヴ・バーであるが、
ここタンジュン・アルーBLUE NOTEはそんなイメージと違い、
ポップス、ロック何でもガンガンの、ロックンロール・クラブのごとき雰囲気。
男女1人ずつのヴォーカルがギター、ドラム、シンセをバックに様々なカヴァーを歌う。
ベースは打ち込み。
時にはギターの兄ちゃんやシンセのおっちゃんも歌っていた。
リード・ヴォーカルの2人はそんなでもなかったが、
コーラスがキマるとかっこよかった。

「BLUE NOTE」で演っていたバンド
ロック、ポップ、何でもありの「BLUE NOTE」

ちなみに昨晩のロビーラウンジもそうだし、
こういった場所にはほとんど日本人は来ていないなあ。
例によって酒の飲めないボクはジュースで1時間半ほど過ごす。

23:30、部屋に戻るが、帰途、通りがかったプールのあたりで
どこの国の人たちか知らないが、白人観光客の集団が騒いでおり、
当然ロープも張られてもはや閉鎖されているプールに続々と乱入
ボチャボチャと飛び込みながらさらに大きな声を上げ、
そばで注意しようとしていた従業員たちも非常に渋い表情を浮かべていた。

思うに日本人は半ば自虐的にかどうか分からないが、
世界の中における日本人の位置付けについて否定的であることが少なくない。
曰く、社会的成熟度が低いだとか、自己主張ができず画一的であるとか、
コミュニケーションが下手だとか、公共マナーが悪いだとか。
細かいことについてここで言及することもしないが、
こと最後に挙げた、公共マナーが云々、といった点に関しては、
ボクは日本人はかなりマシな部類に入ると思っている。
パブリック・スペースで利己的に振る舞い、
周囲に迷惑を撒き散らしているのって、自己中心的なアメリカ人やイタリア人、
中国人や韓国人である割合の方が日本人よりもずっと高いはずだ。

1時頃、眠りに就いただろうか。




前の日
次の日






戻る

表紙