海洋空間佳本


悲しみのイレーヌ 悲しみのイレーヌ」★★★★☆
ピエール・ルメートル
文藝春秋

2022.5.7 記
日本での出版は「その女アレックス」の方が先と、順番が前後しているが、こちらがシリーズ第1作にして、著者のデビュー作。
既に他作を読んでいる私からすれば、相変わらず、という印象だが、実際には小説家としての出発時から、猟奇的な犯行の描写が凄惨過ぎる。
この作品に関してはそこは必要な部分であると理解はできるが…。
クライムノヴェルとしては非常に良くできている。
第2部に入り、第1部の位置付けを認識させられた時は、思わず「巧い」と心の中で唸った。
まったく救いの余地がない、無慈悲の極みとも言えるエンディングが持つ意味合いと効果については見方が分かれるところだろうと思う。
そして、その結末を示唆するようなフラグが作中にいくつも立てられていることについては、著者の思惑であることを慮って差っ引いたとしても、この邦題のセンスはあまりに酷いと評さざるを得ない。
"もしかして原題の直訳か、それだったら仕方ないか"、と思いつつ調べたらそうではないし、どうも出版社及び編集部内に、"もう次作の翻訳出てるしな"、という開き直りがあったとしか思えない。





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