海洋空間編集長雑記



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2004年10月分




2004年10月30日(土)
「ビートたけしさんインタヴュー取材」


おとといの木曜日、映画『血と骨』のプロモーションで来阪していた
ビートたけしさんのインタヴューに行ってきた。
何といっても今や世界のたけしである。
ボクらが子供の頃見て大笑いしていたタケちゃんマンと思って会うわけにもなかなかいかない。
職業柄、有名人というカテゴリーに入る方々とは普段からお会いする機会は少なからずあるが、
その非日常性の度合いはトップクラス。
インタヴュアーは今ボクが担当している番組にレギュラー出演していただいている浅草キッドさん。
キッドのお二人はご存知のようにたけし軍団のメンバー、これ以上の聞き手はいまい。

実際に間近でお会いするのは初めてのたけしさんだったが、
我々の緊張感に見事な肩透かしを喰らわすように、いたって気さくな印象だった。
あれだけのポジションにいる人ながら、悪い意味でのオーラのようなものは感じられず、
師匠vs弟子の対談20分1本勝負はあっという間に終わってしまった。
もちろん、決して初対面のインタヴュアーでは聞きえなかったであろう内容の話や
たけしさんのリラックスした物腰もキッドが存分に引き出してくれ、ディレクターとしては多謝あるのみ。
来られる前は“もし金俊平モードだったらどうしよう…”と戦いていた危惧も杞憂に終わり、何より。

まったく話は変わるが、高野秀行の書く文章はやっぱり最高だ。



2004年10月27日(水)
「“物語を必要とするのは、不幸な人間だ。”」


このところ(ここ数ヶ月間)読書のペースが早い。
読むものは以前に比べてフィクション、いわゆる小説の類がググンと多くなっていることは明らか。
お勉強目的ならともかくも、
単純に息抜き、娯楽を求める時に食指が動くのは読みやすく入りやすい小説ばかり。
時代が時代なら『そんなものは読書のうちには入らん』と入喝間違いない。

皆川博子の近著に“物語を必要とするのは、不幸な人間だ。”という一篇の詩が出てくる。
今の自分は“不幸”なのだろうか。
だから虚構の物語ばかりを欲する?

あえて論理的な言葉に表すまでもなく、
件の詩に表現されている内容が恐らくは真理の一種であろうことは、
直感的かつ感覚的に理解できよう。
そう考えるならば、物語は宗教に等しい意味を持つ。



2004年10月25日(月)
「映画『血と骨』を観た」


史上最高級に盛り上がりに欠けたプロ野球日本シリーズが終わった。
3勝3敗、最終戦までもつれこんだ、
展開・内容ともに非常に面白いシリーズではあったと個人的には思うが…。
ただ日本シリーズ最終戦、日本一を決める試合の解説が牛島と彦野ってどないや…。

今日は映画『血と骨』の試写会に行ってきた。
一切の心情描写を排し、ただひたすら淡々と状況描写に徹した創り方。
あの金村義明を以ってして「気分が悪くなった」と言わしめた『血と骨』、
つまらない映画とは思わないが後味はすこぶる悪し、
家族や友達に無邪気に薦められる映画ではないな…。
俳優・オダギリ ジョーは素晴らしかった。



2004年10月24日(日)
「予約の取れない人気店『ナガオ ヴンダバ』体験」


本日、納車後初洗車を行う。
といってもSSでコーヒー飲んでマンガ読みながら待ってただけなんだけど。
手洗いWAX、ホイール洗浄に室内清掃を付けてドンと。

すっきりしたところで夕食をとりに大阪市内のレストラン「ナガオ ヴンダバ」に妻と向かう。
あの“ザガット サーヴェイ”で料理部門1位に輝いた名店で、
2ヶ月前から予約で埋まっている、と噂のフレンチ・レストランだ。
当然我々も2ヶ月前に予約を入れているので、
ボクなどは行くことすら妻に促されないと絶対に忘れていた。

アジのカルパッチョ、カキのサラダ、
エビとスズキとアサリのタジン(ブイヤベースみたいな煮込み料理で非常にウマい)、
ウサギのフリカッセ(ウサギは初めて食べたけど野趣のある鳥肉のような味でウマかった)など食す。
どれも当然のことながらとても美味しかったんだが、料理が出てくるまでの時間にやや閉口。
ご夫婦2人でされているみたいで忙しいのは分かるが、それにしても遅い。
デザート食って店出るまで3時間半ですぜ。
中国人やイタリア人なら待ちきれずに帰ってしまいそうなテンポではあるが、
それと同等以上にせっかちな大阪人たちが
皆文句も言わず(恐らく)待っているというのはさすがに味のなせる技なのか。



2004年10月17日(日)
「金村義明、岩井志麻子と夕餉 そして走って冬を感じ、炭火七輪に舌鼓」


先週の木曜日、番組をご一緒している作家の岩井志麻子さんと、元プロ野球選手の金村義明さん、
そして数名のスタッフとともに夕食に行った。
場所は大阪市内にある金村さん行きつけの韓国料理店。
どこのガイドブックにも載っていない、ましてや自力で探して行くことも困難な
まさに隠れ家といった表現がピタリとハマる小さなお店。

当初の予定では“岩井志麻子を囲む会”という趣旨のはずだったんだが、
気付けばしゃべっているのは金村さんばかりなり。
彼は元プロスポーツ選手で今芸能界に身を置いている人々の中では、
トップクラスに頭が回るし話も上手いしテレビ向き、
アドリブも抜群に冴える人だとボクは常々思っているが、
オフでもその金村義明を地でいく姿がそこにはあった。
とにかく簡潔に言って、話が面白い。
ただ基礎体力がなまじあるだけに話を伺っていると(そして見ていると)
もうハチャメチャな生活を送っておられるようだが、
このままだとある日ポックリと逝ってしまうような気がする…。
何と19時前にスタートした宴が開かれたのは翌1時、実に6時間あまりも1軒の店にいたのであった。

話は変わって昨晩、もう深夜と呼んだ方がしっくりくるような時間帯にランニングに出掛けた。
例によって夙川沿いを海まで走って行って帰ってくるコース。
走っている途中、耳の穴の奥と奥歯の奥の方がつながったところというのか、
目の玉の奥の奥の方というのか、とにかくそのあたりがキリキリと痛み出した。
ボクだけなのかそれとも他の人も少なからずそうなのか知らないが、
冬の寒い日に外で運動をしたりするとボクはよくこんな症状に見舞われる。
子供の頃、冬の日の体育の授業の時に感じた原風景。
とにかくキンモクセイの香りだけでなく、そんなところにも寒い季節の着実な訪れを感じたのであった。

そして今日は神戸にショッピングに出かけた。
旧居留地のあたりをブラついてTRANS CONTINENTSとDIESELでお買い上げ。
昨日、今日と雲一つない快晴が気持ちいい。

晩は苦楽園にある「魚卓や」という炭火七輪焼の美味い店で食事。
もうどの品も文句のつけようなく最高に美味。
ここに住んでいたら大阪や神戸に出て行かなくても
美味いものがほぼすべてのヴァリエーションそろうので重宝するのだ。



2004年10月11日(月)
「世間は行楽日和の3連休」


おととい、9日(土)の午後から妻の母(名古屋在住)とその妹さん(横浜在住)、
つまりボクにとっては義理の叔母に当たる人が我が家に遊びに来ていた。
羨ましきかな、おばちゃん2人のわがまま気ままブラリ旅である。

土曜の晩、我が夫妻と計4人で近所の激ウマイタリアン・レストラン「アッタカーレ」に行ったら、
予約なしのお客さんはいつも入れないほど混みあっている店内がなぜかガラリと空いている。
若干不思議に思っていたら、あとで団体さんが来るのだよと教えられた。
そしてやってきた団体さんはなんとインド人の大群だった。
12〜3人ほどだったか。
重厚な黒光りするターバンを恭しく頭に巻いた、太ったビン・ラディンのような眼光鋭いオヤジや、
原色のサリーをその身にまとった、年喰ったエルメスのララァのようなご婦人方などなど。
店内が一気に香料臭くなり、そしてやかましくなったのであった。
お店の人は「日本語通じる人が2人しかいないんですよぉ…、騒がしくてすいません」
と慌てふためいていたようだが、まあ面白いしいい。

昨日はおばちゃんズと妻と3人で、朝から晩までたっぷりと神戸見物を決め込んできて、
かなり楽しんだようだ。
ボクは昨日はお役御免、羽を伸ばさせていただいたよ。

今日の朝7:15、叩き起こされて何事かと目が半分しか開かないまま寝室の外に出てみると、
おばちゃんズが最早旅立とうとしていた。
今日から3日間は山口方面に旅をしてくるとのこと。
まさに怒涛のような西宮2泊3日であった。

今日の午後遅く、一人で夙川沿いを歩いてみると、キンモクセイの香りがいっぱい、
季節は確実に冷たく移ろっていく様がひしひしと感じられた。



2004年10月9日(土)
「『大阪ディノニクス』のTさん」


仕事仲間を介して、バスケットボールのクラブチーム「大阪ディノニクス」のTさんを紹介してもらった。
「大阪ディノニクス」は元NKKのPGで現在はNBA解説などでもおなじみ、
塚本清彦さんが代表を務めるチームで、NPOにも指定されている団体でもある。
Tさんは塚本さんとともにチームのCEOに就かれており、実質の運営者。

「ディノニクス」は今、大阪発信で日本人プレイヤーを海外へ送り込むプロジェクトに力を入れているらしく、
それに関連した熱いお話や、
新潟アルビレックスとさいたまブロンコスのJBL脱退表明にまつわるゴタゴタ話など
いろいろ興味深いトピックスを聞かせてもらう。

チームには注目株の若手が多数所属しており、
中でも竹田くんと金井くんという2人のプレイヤーはそのバックボーンも含めてなかなか奥深そうだ。
練習風景の映像も観せていただいたが、
180cmそこそこの身長で簡単にボースハンズでダンクを決めていく選手たち。

残念ながら時間があまりなくてこの時はそれほど突っ込んだ話はできなかったが、
プロ野球もリーグ再編、石毛宏典氏が四国に新リーグ設立構想をブチ上げるような昨今、
様々な協力者を築き上げながら高いところを貪欲に目指している「ディノニクス」の強い理念に触れ、
とても刺激的なひと時であった。
なにぶん日本においてはバスケットボールというスポーツはマイナースポーツには違いないので、
状況は決して楽ではないだろうが、ボクの力の及ぶ範囲内で協力できることがあれば
その時はぜひとも一枚噛ませていただきたいものである。



2004年10月6日(水)
「マイナス思念に満ちた文章になってしまった」


ボクは時代小説が好きな方で、池波正太郎や柴田錬三郎、
藤沢周平、隆慶一郎といった作家の作品をしばしば読む。
つい先日も最近文庫化された『隠し剣』シリーズを読んだところなんだが、
前々から時代小説について感じていたことがある。
それは、なぜか時代小説で描かれる舞台、世界は、
当時圧倒的マイノリティであったであろう、士族階級の営みである、ということ。
寡聞にして門外漢であるボクの認知が甘いのであればなにとぞご容赦いただいた上、
ご存知の方にはフォローしていただければ幸いだが、
ボクら普通人が普通に入手できる時代小説に限って言うと、ごく一部の例外的作品を除いて、
中世〜近代日本における身分制ピラミッドの頂点付近に棲息する人々こそが登場人物である、
という印象を受ける。
たとえば“貧乏暮らしの下級武士”、という描写であったとしても、
モノノフである以上、支配階級に属する身であり、員数的には絶対少数派。

そりゃあ来る日も来る日も畑を耕したり魚を売ったり山菜を採ったりしている庶民の生活に比べれば、
刺客と斬り合ったり老中の陰謀に翻弄されたり許婚を殿に献上せよと言われて困っていたりする
士族の世界の方がドラマティックであるし、憧れの対象でもあるし、
物語は紡ぎやすいのだろうことはよく分かる。
まあ、つまりはそういうことなのだろう。
9割5分のつまらない暮らしよりも、5分の煌びやかな日々。

こうしてボクたち愚民の、物語にもならないくだらない生活は、
毎日毎日、毎週毎週、毎月毎月、毎年毎年、何ら特筆すべきこともないまま、
いや、不愉快なことばかりはやたらと大きな影を落としながら繰り返されていくのだろうか。



2004年10月4日(月)
「認識の是正」


『ナショナル ジオグラフィック 日本版』10月号を見ていたら、驚くべき記述を目にした。
曰く、“レミングは集団自殺するといわれるが、そんなことはない。
それはディズニーが製作したドキュメンタリー映画で広まった作り話だ。”だって。
これが本当ならボクは長年に渡ってウソを信じ込んでいたことになり、
以前、本欄でもこのことについて触れている
何てこったい。
しかしこのレミングに関するエピソードは割りと有名で人口に膾炙している部類の雑学であるし、
副次的にこの習性を紹介してさらに民間への伝播を進めているメディアも数知れずあるから、
結構誤った理解をしている人も多い、ということになるのだろうか。



2004年10月2日(土)
「『BURN THE FLOOR』観劇」


今日はとりあえず早起きしてイチローの記録達成をライヴで観る。
彼がグラウンド上であんなに感情を露にしたのを見たのは初めてだ。
過去のいろいろから、いけ好かんヤツだとはずっと思っていたんだが、
それなのに彼が打った瞬間、反射的に拍手喝采している自分がいたよ。
スポーツ万歳。

夜は大阪城ホールに『BURN THE FLOOR』というイヴェントを観に行った。
外人ダンサーたちが曲、時には歌に合わせて踊りまくり!のダンス・ショーだ。
関係者からチケットを買い求めて行ったんだが、座席はアリーナ最前列、
それも端の方じゃなくて、ほぼステージの真ん前、スゴい!
しかも座ってみたらお隣には何とランディーズの中川くんがかわいらしい彼女と一緒に。
びっくりした。

『BURN THE FLOOR』そのものははっきり正直に言って、前もって想像していたよりも遥かに良かった。
特にオープニングとエンディングで繰り広げられる
メインテーマに合わせたアグレッシヴなダンスが気持ちいい。
最前列なので降りてきた汗まみれのダンサーともハイタッチだ。
フィナーレでは観客が一緒になって踊れる時間も設けられていて、妻もノリノリだった?

終演後、中川くんと彼女を乗せて日本橋まで送って帰る。
4人乗れる車の恩恵を改めて感じたな…。





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