海洋空間B級生活のためのB級名言



第2回 セクハラ患者が人生に目覚めるその瞬間!   2003.7.21



《今回の名言》

今ここで 俺は 膝を折る訳には ゆかない
                 〜「トライガン・マキシマム」第5巻



俺は夏生まれなんだが、夏に弱い。
弱いなんてもんじゃない。弱すぎる。
は〜、暑がりなんだね?じゃあ貯金おろしてさっさとエアコン買いに行けよ!
ってそうじゃないんだ。聞いてくれよ、キッズたち。
俺は暑がりじゃないんだ。
なんというか、夏に縁がない。
夏に嫌われているんじゃないか?
学生の頃一人暮らしをしていたアパートは2軒とも窓が西向きだった。
4年間、温度と湿気と埃と恋と女と友情と単位と論文に悩まされ続けた。
夏は地獄だったなぁ。
なんであの部屋に4万払ってたのかよくわからねぇ。
九州の片田舎で4万だよ?ホカ弁のバイト代が時給560円の土地だよ?
俺、車の修理工場でバイトしてたけど時給860円で、
それでもその土地では高給だったんだから驚くよ。
まあ物価安いし、空気もきれいだったし住んでる人達も良かったし満足なんだけど、
あの部屋だけはヤバかった!
朝起きたら見たことない虫が2〜3匹床の上で死んでるんだよ?干からびて。
夜中に何があったんだよ!?
おまけになぜか夏に大病を患ってしまうんだ。
困った困った。
大学1年の夏には肝臓ぶっ壊して即入院。
大学4年の夏には高熱と脱水症状と引きつけと過呼吸を同時に併発して
救急車で運ばれて即入院。
先日も大腸でウイルスが繁殖して3日間ゲーリー・クーパー祭で死ぬかと思った。
(ごめん、ゲーリー。そして編集長、下品でごめん。)

今回、社会人になって初めて仕事に穴を開けた。
色々な人達に迷惑かけて、心配かけて、その上フォローしてもらってほんとにごめん。
そしてありがとう。
感謝の気持ちでいっぱいです。

何でこんなに病気しちゃうんだろう。
体が弱いって訳ではないんだが、何かここぞって言うときに病気しちゃう。
行ってないのは産婦人科と泌尿器科くらいのもんで、後は大抵行ったなぁ。
こんだけ病院行ってたら医者目指しても良かったのになぁ。

『いいかねマイク、君の病気は風邪じゃない!
君の脳味噌はカニ味噌とキャトルミューティレーションされているじゃないか!』
『モロー先生、僕、カニになっちゃうの?』
『大丈夫だ、マイク。先生がきっと治してやる!』
『うん!僕も大きくなったらモロー
先生みたいに立派なお医者さんになるんだ!!』

…みたいな話。よくあるじゃん?
でも俺、物書きになっちゃったんだよね。

で、今回の台詞は『トライガン・マキシマム』。
知っている人は知っている、知らない人は全く知らない!
俺の周りじゃほとんどの人が知らないって。
ザ・カリーだよ、いや、がっかりだよ、君たち。
この漫画、元々月刊少年キャプテンで連載されてたんだけど
潰れたりしていろいろあったみたい。
現在続編としてヤングキングアワーズで連載されているんだけど本当にいい!
この漫画は本当に深い!
ジャンルとしてはSFになるのかなぁ。
地球外の話なんだけどあんまりSFっぽくはない。
主人公は史上初の人間災害に指定された伝説のガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
双子の兄ナイヴズを探し、ある決着を着けるために旅をしている。
そこに絡む盟友ニコラス・D・ウルフウッド、
ベルナルデリ保険協会のメリルとミリ?
ヴァッシュを襲う12人の魔人達。
暗殺集団ミカエルの眼。
何が恰好良いって、ストーリー、デザイン、コマ割り、台詞回し、全てにおいて申し分なし!
作者の内藤氏は洋トイ(←アメリカのおもちゃです)好きだそうです。
アメコミにも影響受けてるのでしょう。
だって、キャラクターデザインがアバンギャルドっつーかありえないくらい恰好良い。
センスかなぁ…。
羨ましいっつーか嫉ましい。この才能が!!

根本的に台詞全てが重くて胸に突き刺さるんだけど、今回のB級名言。

『今ここで 俺は 膝を折る訳には ゆかない』

…クハァ!言いてぇ!
仕事中にすっごい真剣な表情して言いてぇ!
後一時間で60秒CM原稿3本書かなきゃならん。
しかし現在パソコンのデスクトップ上はソリティアで63連敗中。
やばい。
一本20分以内のペースでないと不可能だ。
どうする?
ミスれば俺の小指が宙を舞う。
無理だ!出来るわけがない。
ソリティアは64連敗。
さようなら、俺の小指。
55分後に俺の指は両手合わせて9.5本。
だがしかし…『今ここで 俺は 膝を折る訳には ゆかない』。

実際の本編ではこんなに軽くなくもっと重いです。
そして深いです。
前回『耳をすませば』でネタバレギリギリだったので
今回から注意しようと決めました(まだ見てなかった人ごめんなさい)。
今回の『トライガン・マキシマム』は本当に読んで欲しい漫画なんで、特に言わないようにする。
しかもこの第5巻はかなりキモになるし、カッコ良すぎるシーン、台詞満載なんで!
ハードボイルド120%で、男子諸君にはオススメ。

で、俺がどうしてこの台詞を選んだのかというと、本当の強さが込められているから。
強さって何だろう?
腕力?知力?武器?
俺は精神力だと思う。
もしかしたら俺は綺麗事を言っているのかもしれない。
いや、綺麗事だろう。
俺だって金属バットとかスタンガンは嫌だ。
しかし、どれを選ぶかと問われれば、俺は間違いなく精神力を選ぶ。
どんな苦境にも負けない強い心を得たい。
『トライガン・マキシマム』を読んでもらったなら、この思いはわかってもらえると思う。
恰好良い武器とかいっぱい出てくるんだけど、
一見バイオレンスなんだけど、
たくさん人が死ぬんだけど、
根底に流れるのは大切な人を失う悲しみ、苦しさ。

主人公ヴァッシュの精神力の強さは二度と過ちを侵さない決意もあるのだが、
もう一つ、生へのこだわりがあるのではないだろうか。
黒服の牧師、ウルフウッドの生への執着とはまた別種のこだわり。
俺は過去に一度死に直面し、そして死にたくないと思ったことがある。
冒頭で述べた大学4年のとき、救急車で運ばれたときのこと。
過呼吸で呼吸困難起こして目の前が真っ白になった。
意識が遠のきかけた時、まだ死ねない!
俺は自分のやるべきことをまだ何一つ為していない!
だから死にたくない!そう強く思った。
ただなんとなく生きてきて、これからもなんとなく生きていくんだろうと、
なんとなく思っていた。
自分の隣に存在し続けていた死を間近で感じた瞬間に自分の生への執着を感じていたのである。

6年ほど前の出来事ではあるが、俺が退院した日のことを今でも鮮明に覚えている。
あのヤバいアパートの小さなベランダに座り込み、タバコを一服点けて空を見上げた。
どこまでも青い空にぽっかりと小さな雲が浮かんでいた。
そして心の底からこう思った。
『生きているって、本当に素晴らしい』。
あの日から偶然ながら自分の為すべきことも見つかった。
大切な人がいる。
盟友と呼べる男がいる。
素晴らしい師がいる。
笑顔をくれた全てに感謝したい。
だからこそ、どんな状況であっても、悲しみに押しつぶされそうになっても、
『今ここで 俺は 膝を折る訳には ゆかない』。




トライガン・マキシマム 『トライガン・マキシマム』
         内藤泰弘

…現在「ヤングキングアワーズ」
  (少年画報社)にて連載中






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