海洋空間B級生活のためのB級名言



特別編 新春スペシャルリポート 怪人ファントマ、FT編集長の新年会へ行く   2005.1.25



久しぶりに乗った阪急電車で俺は一人で後悔していた。
阪神間を走る3本の電車の線は北へ行けば行くほど高級感が増す。
南から阪神電車、JR、そして阪急電車。
俺は普段、主に一番南の阪神電車を使用している。
言ってみりゃあ、銅メダルの電車だ。
久しぶりの阪急電車はお上品な空気がほんのり漂って
俺はそわそわしながら後悔していた。
乗り慣れないものに乗ったせいじゃない。
FT編集長邸への地図を忘れてきてしまったのだ。
同行する友人Sパルプ・ダスト01
 『B級生活のためのB級名言』第7回に登場した俺の相方)とは
現地の改札口で待ち合わせをしている。
電話で話したらSパルプ・ダスト01)も地図を忘れたと言う。
本当にバカだな…俺達。
流れていく夕方の風景は寒そうだ。
何といっても今日は新年会だからな。

道に迷った。
確か編集長邸の近くにCOOP(生協)があったはずで、
Sパルプ・ダスト01)と2人で野生の勘を全開にする。
…どこだここ?
人通りを探して聞いてみる。
店に入って聞いてみる。
なんとかCOOP到着。
差し入れのワインを購入。
よし、後は分からん。
編集長に電話してようやく到着。
もうぐったりだ。
新年会の始まる前に俺とSパルプ・ダスト01)は教訓を得た。
『知らない土地へ行くのに地図を忘れるな』

つーかなんだ? このゴージャスなマンションは!
俺達1階部分から入ったのに、なんでB1なんだよ。
足腰の弱い現代っ子2人の俺達はエレベーターで1階へ。
え〜? 共同の庭とベンチがマンション内にあるよ!?
日曜日のお天気の日には
きっとここで住民達が集って語らったりするんだろうね〜。
で、いよいよ編集長邸へ侵入、いや、おじゃましまーす!

どうも、本日はお招きにあずかり、あ、明けましておめでとうございます。
あ、ユカリンさんお久しブリです。
相変わらず上品で美しい奥様、ユカリン
パーフェクトです。
あれ? もうどなたか女性が来ている
今日は「Cyber Magazine 海洋空間」のライター陣が集まると聞いていたので、
ライターさんかな? と思いきや
彼女は編集長の大学時代の同級生さんだというではないか。
どうも始めまして、怪人ファントマです。
Sパルプ・ダスト01)です。
よろしくどうぞ。
というわけで、人数が揃うまで「ゆっくりくつろいでよ」と編集長
遠慮という言葉を知らない僕達はフカフカのソファーでダラリとすることに。
まー、きれいな部屋ですわ。
白を基調にした暖かみのある空間に床暖が入って
ダイニングには伸び縮みのする広いテーブル、
そしてソファーの前にはAV機器。
隣の部屋はたぶん編集長の部屋なのかパソコンとギターが2本、
バスケットボールとバレーボール。
パソコンからは絶え間なく様々なジャンルの音楽が流れている。
あー…マッタリしてきたぁ。
5人の話題は京都御所の話に。
Sパルプ・ダスト01)は京都の人間で、
この場にいるのは少なく見ても3/5は京都に縁のある人達。
へー、そんな簡単に御所って警報が鳴るんだぁ…みたいな話。
どんな話だよ。
と言ってる間に、編集長の同級生が2組夫婦同伴で来られて全員で9人。
では料理も揃ったんでそろそろ新年会始めましょうかと編集長
しかしテーブルの椅子は8脚。
おやおや誰か1人は
離れ小島(ソファーのテーブル)で食べることになってしまう。
俺とSパルプ・ダスト01)が移動しようと思ったが、
「いいよ、俺が行くから」と主催者・編集長
そんな感じでカンパ〜イ!

俺とSパルプ・ダスト01)は確かに遠慮と言う言葉を知らない。
もしかしたらどこかに置き忘れてきたのかもしれない。
…いや〜、初対面の人と話すのってスゲー楽しい!
皆さんもうお子さんがいたり、今年パパになったりで、
気がつけば話は「父親の心境」「出産の心得」など。
不肖、この俺も今年1児の父になるわけでしっかり聞かせていただきました!
M山さん夫妻に感謝です。
参考に致します(笑)。

料理もうまい! 酒も進む! 話は止まらん!
…やばい! 俺、テンションが上がってる
去年の暮れ、俺は年末のある忘年会で大酔いした。
悪酔いではないが、色々ご迷惑を周りにかけているので、
今回は自主規制をかけねばならん!
…と思いつつも酒は進む(万感の思いを乗せて…)。
よし! 勇気を出してお茶をもらおう。
台所にいるユカリンにお茶を頂く。
…ふぅ〜。
ちょっとだけ落ち着いた。
やれやれ。
俺にはまだメインイベントが残っている。
時計をちらりと見て俺は、少し、ソワソワした。

気がつけば人が増えている。
かなり。
編集長の同級生の皆さん、サークルの後輩と奥様。
もう色んなところで車座が出来たり、
テーブルでもみんな好き勝手に飲んだり食ったり喋ったり、
またそれに混ざったりと結構な盛り上がりを見せる中、
あの男が満を持して登場した
そう、男の名前は牛頭大王…。

なんとも上品なチャイムが鳴り、編集長がモニター付きインターホンを覗く。
「ファントマ、大王来たよ」
しれっと言われたがこっちはもうドギマギしていた。
牛頭大王といえば『壊死家族2』、キノコ、百貨店、妻子持ち、高度な文章技術。
初めて彼の文章をこのサイトで読んだとき、俺は正直圧倒された。
(この人、本当に素人か?)
そう思った。
著者近影を見て再び驚いた。
(この人、本当にカタギか?)
きっと笑い声はゲハハとかグアッハッハッとかなんだろう。
キノコから色んな物質を抽出して、
それを百貨店の便所の個室に入って注射器で打ったりしてるんだろう。
そんな人に違いない!
…しかし、玄関から入ってきた男は俺の想像をバッサリ裏切る
「人当たりの良さそうな人」だった。
で、どうぞよろしく〜と自己紹介し終わると大王が言った。
「ちょっとジャージに履き替えてくるよ」
・・・・・・・・・・・・はああぁ?
今夜は編集長邸に泊まると聞いていたけど、
さっそくお着替えとはそこらの大衆とは一線を画す大王であった。

大王と向かい合って喋って飲むのは楽しい。
この人本当に子供みたいな満面の笑みを浮かべているのだけど、
考えていることが毒っぽい。
百貨店の同僚とお客さんは
この笑顔に騙されてるんだなぁと思うとなんか楽しい。

ところが、ライターはもう一人来る
…彼女が。
彼女の名前はJ.フミオ
現役女子大生で、
コラムの文面からは野放しの猛牛のような印象がうかがえる。
牛頭大王はイメージと現実が少し離れていた。
父親らしい穏やかさとにこやかさを持っている。
フミオさんはきっとアナーキーでファンキーでマッチョだ。
間違いない。
「ゲハハ、もっと飲め! コノヤローが!」って言われて、
少しでも拒否ったら熱い拳が飛んでくるに違いない。

なんだか酔いがいい感じに冷めてきた。
俺は飲むと顔に出る。
真っ赤っ赤になってテンションが少し上がるのだ。
テンションは上がったままだが、酔いは引いてきた。
ううぅ…頭が痛い。
皆さんが言うにはさっきまで赤かった顔がどうやら白くなっているらしい。
なんだろう? 美白効果が…!
ぼんやりと考えていると、Sパルプ・ダスト01)があっけなく帰ってしまった。
まぁいいや。

ふと気付くと編集長がソワソワしている。
フミオ君が来たという。
編集長フミオ君とお会いしたことは?
…「いや、初対面なんだよ。」
なんか俺も緊張してきた。
大王はニコニコ飲んでる。
俺はユカリンにお茶を頂く。

こんばんわと入ってきたフミオ君は…詐欺じゃん!
あの文章と違うよ!
想像とまるで違う。
入ってきた彼女はなんとも上品そうなお嬢様で
物静かな雰囲気を醸し出していた。
急遽ライター陣で座談会を開く。
フミオ君は緊張しているのか本気で口数少ないし、
牛頭大王は酔っ払いで、俺は頭痛がつらくて、
えーん、何話していいか分かんないよー!
彼女の通う女子大の話とかしたり、就職活動の話とかしてたなぁ。
ちょっとずつ話も盛り上がっていい感じで、
俺はいかにコピーライターという職業が損な仕事かを語り倒して、
みんなの持っている幻想をぶっ壊してやりましたよ。
なんだかとってもいいことをした気分で爽やかですよ。

そして気付けばそろそろお開きの時間。
目の前にある時間はいつだって
あっという間に通り過ぎて思い出になってしまうんだ。
みんなで記念撮影。
ライター陣のみでの撮影。

おいしいお酒とおいしい時間。
本当に楽しかった。
川沿いを歩くと、1月の冷たい空気が頬をかすめていく。
JR線を越えて、阪神電車まで歩いてみると案外近く感じる。

阪神間で最下位の電車、阪神電車のホームで一服した。
紫煙はユラリと浮き上がり、1月の風に消えていった。

たぶん牛頭大王は、まだ飲んでるはずだ。






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