海洋空間佳本


八日目の蝉 八日目の蝉」★★★★☆
角田光代
中央公論新社

2011.12.6 記
この小説で本当に角田光代氏が書きたかったことの芯のところは、あるいは男には決して掴みきれないもので、そこは慮るしかないのかもしれないが、とても哀しい物語だ。

中盤に至るまで、希和子が逃避行を続けているくだりにおいては、フィクションとはいえ言動に違和感のある部分や、そうでなくともあまりの不甲斐なさっぷりに読み手が少しストレスを感じてしまうようなところがあったが、すべては美しすぎる終幕への流れによって救われている。
特にこのようにどちらかというと文学性に寄った作品の場合、どう終わらせるか、ラストシーンをどう描くかということが占めるウェイトはとても大きいと思うが、本作は見事。
味わいを一段高めている。





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