史実をある程度なぞりながらも娯楽性をバランスよく散りばめた感のある前半の描写に始まり、上巻の後半あたりからはもう飛ばしまくりというか、少年誌の連載マンガのようなハチャメチャな展開に続いていく。
紙幅としてはかなり長い話ながら、中盤以降のスピード感はまさに疾駆の状態で、ご都合主義の何が悪い、という風な開き直りの声とともに、ドタバタという音すら聞こえてきそうなほどだ。
特に「王妃の離婚」などの傑作と比べると非常に粗い作品なんだけど、面白い。
そこはやっぱり佐藤賢一氏の筆力。
他の好きな作家たちと同じように、文章のリズムや選択された語彙が私の感覚にとても合っているから、どうあっても面白い。 |