2005年刊と古い本ではあるが、ごく基本的な歴史を知るには適当な一冊であった。
もちろん明確に一方の立ち位置にいる著者の目線は完全な中立ということはないだろうから、多少は感情的な部分を忖度し、差っ引く必要があるのかもしれないが、それにしても国際捕鯨委員会(IWC)および米英を始めとする現代の反捕鯨国の出鱈目ぶりを改めて思い知らされる。
今、フカヒレを採取するためにサメを獲り、ヒレを切り取った後は海洋にサメを投棄するといった漁が批判を集めているが、現在は反捕鯨サイドに回っているアメリカ、イギリス、フランス等はかつてクジラに対してまったく同じことを行っていた。
油を採るためだけにシロナガスクジラやホッキョククジラなどといった大型で希少なクジラを大量に捕獲し、資源の枯渇を招いた。
この本には記載されていないが、ガラパゴス諸島のゾウガメを絶滅の危機に追いやったのも、それらの列強国の捕鯨船の乗組員たちが船に積み込む保存食としてむやみやたらに獲りまくったからだ。
そして今、スノッブを気取るそういった西洋先進国の多くは、科学的所見をまったく無視したまま、環境保護を謳うポージングのため、あるいは偏った動物愛護精神の表れとして、はたまたその他の経済的状況を優先するために、何ら理を持たぬままただ声高に反捕鯨と叫んでいるに過ぎない。
南氷洋におけるミンククジラの過剰繁殖が漁業の不振に影響を与えている可能性などには、この本を読んで初めて思い至ったが、なるほどそういった因果だって大いにあり得るだろう。
狩猟や漁獲の是非語る上で、感情的な論点を持ち込んでもそれはまったく不毛で、正しい答えは永遠に出るわけがない。
そうすると解決を導くためには理屈がどうしても不可欠で、すなわち科学的な調査や見通しが必要である。
そこから目を背けて、あるいは見えていないふりをして他国の食文化や生業を否定しにかかるのは、どう考えても愚の骨頂である。
黒船のペリー来航にも捕鯨が大きく関係していたとは、これも初めて知った。 |