生憎柳田國男氏のオリジナルは未読なのだが、この手があったか、と感心させられる一冊ではある。
遠野という魅力に溢れた土地を題材にした民俗学の名著を、文章を操ることにおいて卓越した技術を持つ小説家が構成し直すのだから、面白くないわけがない。
京極夏彦氏の他の作品のような読み応えを期待すると肩を透かされるかもしれないが、あくまで「遠野物語」という古典のアレンジであるから。
私は遠野に足を運んだことはないが、読んでいると、遠野の情景が具体的なイメージを持って脳裏に浮かんできて、実際に行ってみたくなる、そんな本。
余談ながら、藤子・F・不二雄氏を彷彿とさせる内容もあって、私的になかなか興味深い発見であった。 |