ざっくりと一括りにしてしまうのは甚だ乱暴かつ恐縮ながら、ここからもうひとひねりふたひねり、というところで意外やあっさり素直に終わってしまい、職人芸に欠けると思わされる物語が欧米のミステリーには少なくない中、この作品については良い方に期待を裏切り、しっかり骨太の構成で成り立っていることを見せつけてくれた。
主要人物たちのキャラクター造形という点ではぽやっとしている印象もあるが、プロットは実に巧みで、作中作も有効に活かされている。
いかにも英国らしい、どんよりした空模様が似合いそうな雰囲気を醸し出しているとも言える。
シヴィアな読み方をすれば瑕疵は色々と出てくるが、充分良質なパスタイムではある。
ひと段落、という誤用が訳文にあるのはいただけない。 |