初めてコナン・ドイル以外の手によるホームズもの、パスティーシュを読んでみたが、これはコナン・ドイル財団により、公式に"続編"と認定された初の作品であるとのこと。 確かに作中からは、ガス燈の仄かな明かりが灯り辻馬車が行き交う霧がかって薄暗いロンドンの街並みや、ベーカー街221Bの下宿の部屋の様相などのイメージがありありと伝わってきて、小学館の「名探偵ホームズ全集」を繰り返し読み耽っていた30数年前の記憶を鮮やかに甦らせてくれる。 といっても中身はいささかショッキングな場面もあり、年端もゆかぬ少年少女向きのストーリーではないかもしれないが。 いつものワトスン節は健在、ホームズの気分屋ぶりもしかと描かれ、またレストレイドは登場するしベイカー街別動隊も、さらには得意の変装術やアクションシーンまで盛り込まれ、まさにシャーロキアンも満腹になるほどのトリビュートものと言ってよく、本格ミステリーとしてシヴィアに読み込めばいろいろと突っ込みたくなるところもあるだろうが、あくまでも"ホームズもの"という、いわば著者と読者の間に暗黙の共通認識が端からある"ハーフファンタジー"のようなものとして読めば、何の文句もつけようがない傑作である。 ただ1点、途中でモリアーティ教授をああいった形で登場させる必然性が果たしてあったのかどうか、個人的にそこだけは違和感が残る。 |