海洋空間佳本


宝島 宝島」★★★★★
真藤順丈
講談社

2019.1.10 記
これぞ小説、物語の真髄か。

描かれているのは、大戦後から返還に至るまで、沖縄の20年間。
凄惨な地上戦を経験し、以降も理不尽な蹂躙に耐え続けた沖縄を舞台に、実際にあった史実を縦軸にして、実在の人物も交えながら、凄まじきスケールで当時の熱気が紡がれている。

正直、単語レヴェルでノイズのように沖縄の方言=ウチナーグチのルビが頻繁に振られていることもあってか、冒頭は取っつき辛かった。
随時、括弧で閉じられている"語り部"の合いの手のような呟きも、イマイチ意図が分からなかった。
が、それもこれも読み進めていくうちにつれ、この作品になくてはならない、不可欠な要素であると思われてきたから不思議なものだ。

物語としてのプロットはもちろんのこと、選択され綴られた言葉の質も相当なもの。
これだけのヴォリュームなので、あるいは過剰な修辞や蛇足的な書き込みが散見されてもおかしくはないが、今作に限ってはそう感じたところはなく、その場その場でふさわしい日本語が過不足なく並べられており、まるで韻文のような美しいリズムさえ伝わってくる。

折しも、今まさに辺野古の埋め立てを巡って大きく揺れている沖縄。
至らぬ言葉でこれ以上細かく感想を述べることは控えるが、この小説を読んで心動かぬことがあればそれはもう人間として嘘なんじゃないか、そう言い切ってしまってもいい類の稀有な大傑作だと思う。





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