個人的にちょっと物足りなかったところはあるんだけど、一気に読ませてくれたその力技に感服。
おお、なんだこれは…、とグッとミステリー的興味を惹いてくれた博物館の話も、結局はストレスなく完璧に骨子と融合しているかと問われれば必ずしもそうではないし、中盤、DIDという症例について長々と演説を打つところは冗長過ぎてせっかくそこまで積み上げてきたリアリティを損なわせてしまっている気がする。
クライマックスからラストに至る一連もいささかありふれたパターンに則った持っていき方に感じられるし、掘り下げが足らないともどかしい点もいくつか。
しかししかし、ストーリーそのものが持つ魅力は疑いようがなく、また著者の構築力も実に確かであるので、グイグイと先を読み進めることができる。
扱っているテーマや分野に少しでも関心を抱く人ならスンナリ読了できることと思う。 日進月歩の医学の世界なので、少し前に書かれた、ということを念頭に置きながら読んでみると、またより強い関心も生まれてくるかもしれない。 |