元々は1988年刊と相当前の作品だが、たまたま私は上橋菜穂子氏の「獣の奏者」を先に読んでいたので、冒頭から相通ずる雰囲気を感じた次第。
「日本書紀」と「古事記」、いわゆる記紀をベースに独特の世界観を描き出しており、登場人物は、地上に住み日々過ごしている普通の人々はもちろんのこと、そこに何と神たちまでが加えられている。
ギリシャ神話に登場する神々が、欠点や短所を備えた人格を持つ、まるで等身大の人間かのように随所で表現されていることはよく知られているが、この作品における輝の大御神や闇の大御神、照日王に月代王といった神たちもそれと同様に、人智を超えた特殊能力を無論有している一方で、読んでいる途中に「あれ、彼らは人間じゃなくて神なんだよね?」と自問してしまうほど、"人間ぽく"設定され、描写されている。
そしてそれが物語の味を引き立てるスパイスとして見事に効いていて、生命が有限であるからこその美しさや、壊れやすくかけがえのないこの世界そのものの意義といった骨太のエッセンスが、ズドンと真っ直ぐ読者の心に響いてくる。 |