「ベタな感動物語書くよな〜」といつも思いつつも読んでしまう重松清。
常に地に足をつけた、いつでもどこでも誰にでも起こりうる日常を描く中でドラマを紡いでいく彼の小説の中でも、この連作は読者の涙を誘うという点では他に比肩するものはないんじゃないだろうか。
彼の作品に限らず、日本中見渡してもちょっと見当たらないかもしれない。
正直言って扱うテーマは決して新しくも衒奇でもなく、むしろ極めて古典的で使い古されたものだと思うし、ストーリー展開だって「こうくるか!」というようなアクロバティックなところはほとんどないけれど、ただ文章力が抜きん出ている。
1つ1つの状況描写、登場人物がしゃべる台詞、彼らの行動やそこに至るまでの過程、それらのすべてが超絶的な筆力で綴られているがゆえに、小説の中の世界がまるで今自分の手の届くところに実体を持って存在しているかのように感じられる。
作者の想像力たるや、常人の思い及ぶところではないな、まったく。
人の死と愛をテーマにした物語はそれこそ星の数ほどあるけれど、「世界の中心で、愛をさけぶ」はもちろんのこと、浅田次郎でさえもちょっと重松清には太刀打ちできないな、と個人的には感じる。 |