総じて“クロニクル”、と括られうる長大な小説を私は好むのだ、という傾向を改めて解悟。
すべての伏線が緻密に張られていてそれがクライマックスで一気に明かされ余すところないカタルシスに至る、といった作品では決してない。
破綻、とまでは言わないけれど、どっかでパズルに組み込むことを忘れてしまったのかな、なんて感じられる微少なパーツもあるにはあるが、あらゆる事情が陰惨で破滅的で暗澹たる結末に向かって加速してゆく物語そのものが持つ悪魔的な魅力は、そうした細かな瑕を殊更問題にはしない。
つまりは、作者のストーリーテラーとしての才能、文章を産み出す純然たる能力の為せる業に違いない。
正直、オチはあまり好きではなかったが、一晩1冊のハイペースを崩さずに読み切らざるをえなかった、という観点から、星5つ。
少しだけ、奥田英朗の「最悪」を想起させた。 |