探偵とその助手が、日々舞い込んでくる日常の謎を軽妙に解決していく連作集、と言ってしまえばそれまでだが、この作品では、その舞台は中東にある架空の首長国に造られた死刑囚専用の監獄で、探偵役すらも死刑囚である、という設えがまず読者の興味を惹くから上手い。 実際、各小話のレヴェルは決して粒揃いとは言えないと思うが、限りなくヘヴィでシリアスな状況に置かれた登場人物たちが、いささかバカバカしくもあるライトな謎に取り組んでいくミスマッチぶりがなかなか面白い。 最終話、比較的早めに真相の骨子は予見可能で、ややダークな結末もまあ没個性的と言えるのかもしれないが、あの後味の悪い締めは嫌いじゃなかったりする。 |