全2作より時代は遡り、真琴も野崎も登場しない、いわば"琴子の目覚め"の物語。
"家"という、これまたホラーではこすり尽くされた題材に挑んだ作品ではあるが、変わらず高い筆力で、途中で手が止まらなくなってあれよあれよという間に読み終わる。
覚醒前後の琴子の様子が語られているという点においても、シリーズ及び彼女のファンには読み応えがあるだろう。
そしてやはりというか、クライマックスでの怪異との対決シーンにモヤモヤを感じる。
成敗に向けて用意するものは酒に鏡に煙草の煙と(もう1つ飛び道具があったが結局は使用せず)、何ら読者にインパクトを与えないありきたりのギミック。
挙句の果ては論理を超越した琴子の特殊能力も通用せず、まさに偶然の巡り合わせにより拾った薄氷の勝利。
このパッケージングに有無を言わせぬ筋道が一本通ったら、本当に死角のない傑作シリーズになると思うんだけどなあ、などと無責任な一読者として勝手なことを申し上げてみる。 |