世の中の人もなんとなくは知っているだろうが、インサイダーが改めて詳らかに語る、新聞販売における"負"の世界の描写は実に読み応えがある。
インターネットの普及により、紙媒体が急速に衰退しつつある今という世相を、無慈悲なぐらいに切り取っている。
充分面白く読めるが、小説としてはちょっと早いテンポでエピソードを積み過ぎかな、という印象も受けた。
おそらく在職中に著者が見聞したであろう、リアルな例をすべて表現する、という目的を優先した結果かと思うが、連作にするか、あるいは続編なども視野に入れた構成にした方が、ひょっとしたらよりスムーズに読み易くなったかも。
エピソードを消化するために、主人公の言動が時にご都合主義にハマり、いかにも作り物っぽくなってしまっている、という箇所をいくつか感じたのがやや残念。
こうした性格の作品を、独立系の小出版社がノンフィクションとして出すのではなく、こんな大企業が小説として出版した、という事実にはいささか感銘を受けた。 |