見事な展開、と讃えるしかない。
もちろん各話とも読み応えがあるが、今回は何といっても最後に収められた「心星ひとつ」にガツンとやられた。
澪と小野寺数馬の想いが初めて真っ向からぶつかるクライマックスのシーンが読み手の心を揺さぶるパワーは半端じゃない。
徐々に盛り上げていって泣かそうとするあざとさなどとは縁遠く、いきなりドカンとくる。
物語の骨子は、大昔から使い古されているパターンに違いないのだが、1作目からの大きな流れも含めて、本当に上手い。
素直に感動できるいい小説だ。
毎度例えが「ゴルゴ13」になっているような気がして恐縮だが、巻末付録によると著者の高田郁氏はすでに物語の結末を、最終話のタイトル込みで決めているそうで、これもまた不朽の名作「ゴルゴ13」と同様。
終わらないんじゃないかと読者を不安にさせつつ、着地点がしっかり見えていると言い切れる構成力もまた素晴らしい。 |