おそらく自分が20代の頃に読んでいたら、この書が持つ力はそれほど心に響かなかっただろうと思うが、30代も後半に入った今ならすんなりに沁み入ってくる。
文章自体も読みやすく、あれよあれよという間に、読了。
乙美さんが初めて1人で熱田さんの家を訪れた時のエピソードを描いた第5章は特に出色で、気持ちを揺さぶる。
あれはやはり女性でないと書けない内容であろう。
井本とハルミの存在設定は、ちょっと中途半端に過ぎる気がした。
この類の物語ならば、あそこはごまかさないでいただきたいと思う、私的に。
それ以外にも全体を通し、細かいところを含め腑に落ちない箇所がいくつかあったり、残念な設定等が感じられるので、ちょっと惜しい作品、かも。
重松清氏の筆力にはやはり少し及ばぬか。 |