「シャドウ」★★★★☆ 道尾秀介 東京創元社 2010.7.6 記 最近年の作品に比べれば若干粗さが見えるとはいえ、さすがの道尾節が唸っている。 張り巡らされた線が一つ一つ丁寧に紐解かれていく様にはカタルシスさえ覚える。 ミステリーを読み慣れている者にとってはある程度の段階で割と真相に近い予断が可能というのも、裏を返せばあまりにブッ飛んだ展開を強いていないという証左なので、どちらかといえば好ましく感じられるほど。 ただそれでいて、肩透かし、期待外れなどということは決してない。 似ている作風となるとやはり伊坂幸太郎氏とかになるんだろうか。 すでに物語がエピローグに差し掛かり、今にも幕が落ちそうになっている折になっても、独特の緊迫感を最後まで読者に与え続ける、そんな良質エンターテインメント小説だと思う。