海洋空間佳本


世界のシワに夢を見ろ! 世界のシワに夢を見ろ!」★★★★☆
高野秀行
小学館

2005.8.22 記
常人は一生体験しないであろう、数々の尋常ならざる経験をしてきた作者が、今も現在進行形で積み重ねているそれらの出来事をひたすら軽く読みやすい文体で書き連ねているエッセイ集の単行本である。
多少大げさに書くならば、驚愕と、そして爆笑。

事実や経験をありのまま、起こったままに書くというのは、それはそれで才能かもしれないし真面目な行為ではあるのだが、それが必ずしも読んで面白い文章とは限らない。
この作者の場合、それとはまったく反対の才能こそが無尽蔵に備わっている、と思う。
彼が見た、聞いた、思った様々な事柄が、絶妙な語彙とリズムでもって、ここまで面白くなるか、というぐらいに綴られている。
あっという間に読み終わってしまう。

一つだけ苦言を呈させてもらうならば、これは作者本人ではなく制作サイドに帰される責だとは思うが、昨今webに溢れている日記的文章によく見られるような、ところどころの単語や文章のフォントを太字にしたり大きくしたりしていること(さすがに色までは変えていなかったが)、あれだけはいただけないな、と個人的に思った。
高野秀行の組み立てる文章のどこに面白みを見出し、どのポイントにニヤリとするのかということは、読む者の感性に委ねていただきたいものである。
ほら、ここに注目して読んでね、とか、この言葉が面白いんだよお、なんて指図は他人の感覚によって受けたくはないのだ、彼の本では特に。
特にこの本を読んでいる時は、「ああ、この文章、変に文字なんかおっきくしてないで普通に印刷されてたらもっとよかったのになあ」と何度も感じたので。

星を1つ減じた理由はそこです、内容だけなら、もちろん星5つ。





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