この著者については、デビューされた直後にその作品を読み、うーん自分にはちょっと合わないかなあと感じてから遠ざかっており、以来本当に久しぶりに買ってみた。
先入観を持っているわけではないと思うが、やっぱり文章を運ぶリズムや物語の構成とかが若干物足りなく、プロの小説家ならもう少し…などと偉そうにも感じたところはあったが、いや、十二分に面白い作品だった。
まずは実在の人物の名前をポンポンと繰り出して興味をつなぎ、油断すると、あれ、これはノンフィクションだったっけ? と読み手が一瞬錯覚しそうなぐらい。
悲惨の極みにまでは寄っていないが、それほどには戦時中の空気も生々しく描かれている。
クライマックスからの流れを含め、最後は色々が都合の良いところに収まるのでズドンと来るような読後感はないが、映画というものが当時、どれほどの意味合いを持ち、どういった位置付けにあったのかということに思いを馳せられて、とても興味深かった。
そして、これが2017年の日本で書かれ出版されたということも併せて。 |