海洋空間佳本


小夜しぐれ 小夜しぐれ - みおつくし料理帖」★★★★☆
高田郁
角川春樹事務所

2011.11.11 記
シリーズ第5弾にもなると、いくら作品のクオリティが高くとも、特に読み手側にとって初期の頃のテンションを保つのはなかなか困難なものだが、そんな中でも本書はさらなるヴァラエティ開拓を試みることで、広がりを持たせることに成功していると思う。
種市がおつるを失ったエピソードを絡めた「迷い蟹」、あさひ太夫と三度目の接近遭遇を果たす「夢宵桜」、美緒のほろ苦い縁談にちなむ「小夜しぐれ」と、どちらかというと主人公・澪の周辺人物にスポットを当てた作品が連なり、そして最後に、澪を一切登場させぬまま御膳奉行の奮闘を描く「嘉祥」で締め括り。
「ゴルゴ13」でも、ゴルゴ本人が出てこずとも「ゴルゴ13」として成立している話がいくつもあるが、その名人芸を思わせるような見事な工夫だ。
本当に安定している。





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