海洋空間佳本


笹の舟で海をわたる 笹の舟で海をわたる」★★★★☆
角田光代
毎日新聞社

2015.4.5 記
何ら特殊でも特別でもない、どこにでもいそうなある初老の女性が、1990年代に設定された現在から過去を振り返りつつ、その半生を浮き彫りにしていく、というパッケージング。
昭和という時代性を強く映し出しながら、淡々とした筆致で大きなうねりを描いている。
思い通りの人生を歩んでいける人なんていない。
皆、自分の力ではどうにもならない巨大な流れに呑まれながらも、与えられた生を懸命に全うしている。
そしてそれと同時に、どこにでもいそうな市井の人間ひとりひとりが、何物にも代えられない唯一無二の日々を送っている。
そんなことを改めて感じさせてくれる、ピュアな文学作品だ。





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