文章力は確かだし、ミステリーとしてのストーリー展開もしっかりしているので、非常に読みやすい。
凄惨な描写には眉を顰める向きもあろうが、基本的にはサラリと読ませる、まとまった作品だ。
ただ、ミステリーとして成立させることをおそらく第一義に置き、それを優先し過ぎているために、肝心のプロットがリアリティと説得力を失ってしまっているのが残念。
一般市民をパニックに陥らせ、あまつさえ暴動まで引き起こす狂集団へと変貌させるには、要因があまりに弱いし、また、刑法39条をテーマの1つとして扱っている割には、踏み込みが浅過ぎる。
若干厳しめの表現をしてしまうと、後に何かが残る意義深い小説というものではないが、ほぼ一気読みさせられてしまったそのリーダビリティの高さに、星4つ。
結局甘い。 |