海洋空間佳本


ペットのアンソロジー ペットのアンソロジー」★★★★☆
近藤史恵、我孫子武丸、井上夢人、大倉崇裕、大崎梢、
太田忠司、柄刀一、汀こるもの、皆川博子、森奈津子
光文社

2014.9.11 記
柄刀一氏による「ネコの時間」は、通勤の電車内で読んでいて、ヤバい、と思うぐらいに涙腺を刺激された。
動物ものの小説を書いて動物好きの読者の涙を誘うことそれ自体は、テクニックとしてはそれほど困難なものではないのかもしれないが、この作品はそのプロセスにある種のギミックというかトリックを仕掛けており、カタルシスに至るまでのその流れが上手かった。

他にも、我孫子武丸氏、井上夢人氏という性格の異なるミステリーの名手たちによる、いかにも"らしい"小話が読めるし、これまたオムニバスの中で異彩を放つ皆川博子氏の「『希望』」も実に雰囲気に溢れている。
冒頭を飾る森奈津子氏も見事にスタートダッシュを決めており、通読においてはその印象も大きかったかもしれない。

最後に収められた、発信者の立場であるところの近藤史恵氏の作品が、他に比べると少し見劣りしている…のも今回はご愛嬌。





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