昔から、人間が生み出した科学技術が暴走して人類存亡の危機を招く、というストーリーの小説や映画は多いし、またスティーヴン・ホーキング氏やイーロン・マスク氏、あるいはビル・ゲイツ氏などが人工知能の危険性を憂いている、という話を最近チラホラ聞くようになった。
いわゆるシンギュラリティや知能爆発といった概念を含め、AIを巡る現在の環境の輪郭を知るのにこの本は非常に有用な1冊。
ジャーナリストである著者も、先述のテクノロジー系セレブリティたち同様、将来的にAIが人類の脅威になり得ることを真剣に心配しており、その危険性を説くというのが本書のメインテーマなわけだが、情報技術の専門知識を持たない私にとっては、その憂慮に至る論理は充分理解できるものの、では実際にどのような技術がどう進化・作用して、具体的にどのような経緯を辿ってどんな危機が発生し得るのか、そのメカニズムを明確なイメージとしてつかむことは難しかった。
もちろん、遺伝的アルゴリズムやニューラルネットワークといった、興味深くて門外漢にも分かりやすいブラックボックス的なメソッドなどを提示し、またAIによる"衝動"といった概念なども用いて、そのあたりについても著者はある程度の紙幅を割いてはいるのだが、それでも肝心要のところがミッシングリンク化しているというか、本当に知りたいプロセスの本体が、イマイチポヤッとしているような気がして仕方がなかった。
あるいはそもそも私自身が、AIの知能が人類のそれを上回る、という発想に根っこの部分で懐疑的であるから、こうした感想を抱いたのかもしれないが。
あと、本書はおそらくは著者渾身の、全15章にも渡るヴォリュームの大作なのだが、同じ主張を形を変えて繰り返している箇所が多く冗長に感じたので、もっと合理的にシェイプアップして過不足なく内容を著すこともできたのではないだろうか。 |