海洋空間佳本


乙霧村の七人 乙霧村の七人」★★★★☆
伊岡瞬
KADOKAWA

2025.4.21 記
男女学生のグループが日常から隔絶された環境に出向いて身を置き、そこで生命の危険を脅かすトラブルに次々見舞われていく…という、古今東西で頻々と使われてきた類型を敢えて採用する挑戦的な構え。
"弟切草"をモチーフに据えるという点も、ホラーにカテゴライズされる創作物においては典型の一つと言っても良い。
津山の事件を想起する向きもいるであろう、土着的な因習が放つ民俗臭を強く纏うエピソードを絡めるあたり、雰囲気はある。

懐かしの「13日の金曜日」を彷彿とさせるパニックホラーが展開された第一部に対し、第二部では後日譚の体裁をとり、各登場人物とのダイアローグ等の手法を交えいわゆる謎解き=答え合わせが淡々と繰り広げられていく。
プロットが思った以上に趣向が凝らされていて、どちらかというと惰性で読んでいた身をぐっと引き寄せられた感があったので、ぎり星4つに昇格相成った。
ただ、年齢錯誤の仕掛けは本当に必要だったのか甚だ疑問で、「葉桜の季節に君を想うということ」の効果とは比べるべくもない。





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