海洋空間佳本


俺ではない炎上 俺ではない炎上」★★★★★
朝倉秋成
双葉社

2025.9.25 記
映画公開直前のタイミングで首尾良く読了。
それぞれが現代社会に生きる人間としての原罪を認め、再生を果たしていく長くて濃密な一日の旅…と称するのはちょっと大仰か。
プロットはとてもよく練られている上に、それを活かす語彙やリズムといった技術面も確かで申し分ない。
そして技巧的でありながら決して頭でっかちに走ることはなく、例えば主たる仕掛けである叙述トリックは必然性を伴ってスムーズに組み込まれ、極めて高い効果を発揮している。
不肖私も見事に騙され、これぞミステリーの醍醐味と膝を打った次第。
SNSというデジタルツールの象徴をモチーフに据えながら、古来変わらぬ普遍的なテーマである人間の本質に迫る、2020年代を表す屈指の傑作であろうと思う。
タイトルも本当に良くできている。
あと、青江の存在がまさに神。





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